症状と治療のお話し : うつ病 双極性障害 自律神経失調症

まず最初にこちらをお読みください。

うつ病

週2回で1ヵ月ほど 鍼灸治療を受けていただくとよくなる可能性大です。最初の1~2回で効果は実感できるでしょう。中医学に基づいて治療していますが、独自の見解もあり学会でも発表しています。
2012年6月に専門誌 中医臨床に「督脉と奇経を組み合わせたうつ病、パニック障害、双極性障害の治療」を発表しています。

双極性障害

一般には躁うつ病という呼び名の方が知られています。お医者さまはうつ病との鑑別に気を使いますが、鍼灸は患者さんのその時の状態に合わせて治療するので鑑別はそれほど゛重要ではありません。落ち込んでいる時はうつ病と同様に治療します。中医学でいう痰湿が双極性障害の大きな原因と考えているため、痰湿をとっていくことを重視しています。2012年6月に専門誌 中医臨床に「督脉と奇経を組み合わせたうつ病、パニック障害、双極性障害の治療」を発表しています。

約9か月治療を続け うつ病がよくなった話

40代初めの男性が来院されました。10年近くうつ病で精神科に通院されている方です。仕事をやめてからも6年ほどたっています。
うつ病というとひたすら気分がおちこみ、何をする気もおきないといった状態をイメージしがちですが、個人差は大きく イライラしたり少しのことで怒ったり、すぐに気分がおちこみしんどくなったりという状態になる方もいらっしゃいます。この男性もイライラしたり、すぐにしんどくなったりというのが繰り返しやってくるという状態でした。全身にしびれ感を感じたり、息がしづらくなることもあります。
 
3カ月ほどは週2回 その後は週一回で治療を続けました。お連れ合いが働き、本人は家事を一部 分担しているという生活ですが、どれくらい家事をこなせるかが改善していく目安となりました。約9か月治療を続け、なんとかやっていけそうだということで 治療を終わりました。
 
「非常によい効果があった。ほとんど完全に治り苦痛がない」を選択していただき、治療前の苦痛を10とすれば、今は1であると回答してもらいました。
 
以下のコメントをいただきました。
 
初めに伺った時は人生のどん底で死にたい気持ちがすごくありましたが先生とスタッフの方のおかげで人生が楽しく感じられるようになりました。助けていただきありがとうございます。まだ100%ではないので助けていただくこともあるかと思いますのでこれからもよろしくお願いいたします。
イライラは少しありますが気持ちの落ち込みはなくなりいろんなことを楽しめるようになりました。ありがとうございます。以上 コメント 自筆のコメントは以下からご覧ください。
 
うつ病は脳内の神経伝達物質セロトニンの不足によっておこるという仮説が常識のように語られてきて、その仮説が SSRIなどの抗うつ剤が効く理由とされてきました。近年 その仮説に疑問符がつくようになってきています。

☆うつ病は脳内の神経伝達物質セロトニンの不足によっておこるという仮説は間違い?
 
例えば大塚製薬がつくっている「うつ病」のサイトでは次のように解説されています。
 
◆うつ病が起きるメカニズムは不明
うつ病が起きるメカニズムについてはまだ明らかになっていませんが、いくつかの仮説が提唱されています。ここでは代表的なものを紹介します。
1960年代、抗うつ効果が認められた薬の働きを研究したところ、抗うつ薬を与えられた動物ではノルアドレナリンやセロトニンなどの神経伝達物質(モノアミン)が各神経細胞の末端にあるシナプス(神経細胞の接合部)で増加していることがわかりました。そのため、うつ病ではこれらの神経伝達物質が欠乏しているのではないかと考えられました。
これはモノアミン仮説と呼ばれています。現在使用されている抗うつ薬の多くはこの仮説を元に開発され効果を上げてきました。しかし、うつ病が起きるメカニズムはそれほど単純ではないということがわかっており、たとえば、モノアミンの増加は抗うつ薬投与後すぐにみられますが、抗うつ効果が現れるには数週間かかってしまうことや、モノアミンを減少させる薬(高血圧の治療薬)を飲んでもすべての人がうつ病になるわけではないことなど、この仮説では十分に説明することができないからです。以上 大塚製薬のサイトより
 
◆抗うつ薬については 以下のように解説されています。
うつ病治療の基本となるのが抗うつ薬です。脳の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の減少をうつ病の原因と考えるモノアミン仮説に基づいて開発されました。ただ、この仮説だけでは説明のつかないこともあり、うつ病のメカニズムはまだ明らかになっていませんが、抗うつ薬には一定の効果が認められています。以上 大塚製薬のサイトより
 
製薬会社がつくったHPですら以上のように書かなければならなくなったのです。
 
◆「抗うつ薬の一定の効果」とは
抗うつ薬だけをつかった治療で症状が改善する方は約50%、寛解(症状がなくなること)する方は全体の約30%*1というデータがあり、主治医の指示どおりに治療を続けていてもなかなかよくならないと感じている方は少なくありません。以上 大塚製薬のサイトより
 
◆うつ病の客観的検査に使える光トポグラフィ(NIRS)じつは私も研究しました
 
大塚製薬のサイトで光トポグラフィ(NIRS)が紹介されていました。
2009年4月から客観的検査として光トポグラフィ(NIRS)と呼ばれる検査がうつ症状の鑑別診断補助に用いられています。これは頭皮に近赤外光を当てて反射して戻ってきた光を検出し分析することで、脳表面の血流を測定し、活動中の脳活動のパターンがうつ病、双極性障害、統合失調症のどのパターンと類似するかを調べる検査です。現段階ではまだ診断の補助に過ぎませんが、今後の発展が期待されます。以上 大塚製薬のサイトより
 
私も光トポグラフィ(NIRS)を使って日本大学医学部(2022年現在は東京大学大学院)の酒谷 薫教授と共同研究をしました。「不安レベルへの鍼の効果と前頭前野皮質のNIRS活動計測」というもので2016年にアメリカ国立医学図書館の医学データベース「パブメド(Pubmed)」に収録されています。
 
2022年7月掲載

コロナ後遺症の鍼灸治療

コロナ後遺症の治療を2020年末からやっています。コロナが治って感染力がなくなったことがはっきりしている患者さんの治療です。発熱している方の治療はお断りしています。
2022年1月 掲載 7月追加
 
経験からいうと倦怠(けんたい)感、ブレインフォグ(脳の霧)と呼ばれる思考力の低下などに鍼灸はよく効きます。うつ病の治療を応用して治療しています。
味覚障害は1~2回で改善します。嗅覚障害もすぐに改善しますが、味覚障害よりは時間がかかります。コロナ以外の味覚障害、嗅覚障害はいったんよくなったらそのまま安定していることが多いのですが、コロナでは波があります。脳の状態が関係しているためではないかと考えています。
 
☆その1 40代の看護師さんのコロナ後遺症の治り方
 
職場の病院のクラスターで感染しました。2週間 コロナに苦しみ体重も一時は7キロ減りましたが、現在は戻っています。職場復帰しています。発症後約1カ月で来院されました。
味覚嗅覚障害、聴覚障害が残っていました。からい、すっぱいはわかるがうまみがわからない。嗅覚はほとんどありません。職場で世話する患者さんの汚物のにおいがわからないそうです。
聴力も片方の耳の低音が低下、125ヘルツが約40デシベルです。耳鳴りもあります。ほかは10から20デシベルで正常です。
約一か月半に7回治療しました。味覚は以前を10とすると7~8。嗅覚は以前を10とすると7 ただ安定していません。耳の不快感や耳鳴りはなくなりました。3か月後には味覚も臭覚も感染以前に戻りました。聴力も回復しました。ただミーティングで多数が話をすると、聞き取りづらい時もあるそうです。
 
☆その2 50代の女性がすぐに元気になりました。
 
50代の女性が首の後ろがだるいと来院されました。2か月前に新型コロナ感染症にかかりました。40度の高熱が4日間 続き、咳に苦しみました。
治ったものの鼻の奥が乾き、においがわからなくなりました。味覚はあります。抜け毛が増え 目が疲れます。のども腫れた感じがします。コロナは治りましたが、後遺症が残りました。
コロナ感染前は後頭部がだるいといったことはありませんでした。元気自慢だった女性が、コロナ感染後は雨がふると身体がしんどいといった状態になりました。
 
この女性は一度で劇的によくなりました。治療の翌日には外出する意欲が出て、7時間も出歩かれたそうです。約一か月間に5回 治療し諸症状がすべてなくなり治療を終わりました。においが戻り、抜け毛もなくなりました。

☆その3 コロナ後遺症の咳喘息が治りました

トラック運転手の男性が2年ぶりに2022年3月に来院されました。
コロナ対策で全国を転々とされていました。患者配送 ワクチン配送等 患者の急増した地域へ派遣されていたそうです。
コロナ感染は のどの痛みからはじまりました。38度の熱が4日間続きました。自宅療養でした。保健所へ4時間、電話し続けてやっとつながりましたが、「ひどくなったら救急車をよんでください」の一言だったそうです。
治って感染力もなくなってから病院に行き肺炎のあったことがわかりました。「死ななくてよかったですね」「本当にそうです」と会話しました。
コロナは治り感染しなくなったのですが、身体がだるく、夜になると咳が続きます。空咳で咳喘息の症状です。味覚障害も残っています。一度 治療したところ倦怠感はなくなりました。甘みもわかるようになりました。3週間に6回の治療をして完治しました。2022年7月掲載

☆その4 
約一か月半で治った耳詰まり鼻づまりと気分の落ち込み コロナ後遺症の鍼灸治療
 
30代の日本人男性が3月に来院されました。2022年1月初めに左耳がふさがり、つまる感じがしてきました。聴力の低下はないのですが、気分が落ち込み何をする気にもなれないそうです。
2021年12月末にコロナに感染しています。アメリカでコロナにかかりました。カリフォルニア州在住の方です。鼻水やのどの痛みが続き、ようやく楽になってきたと思ったら1月に耳がおかしくなりました。体調不良のため日本に一時帰国されました。耳だけでなく鼻詰まりも続いています。本人にコロナ後遺症の自覚はなかったのですが、経過から見るとコロナ後遺症といえます。
 
2週間に7回治療すると ほぼ耳も鼻も気にならなくなり、気分の落ち込みもなくなりました。
じつは雨が降って寒くなったときに、ちょっとだけ症状がぶり返すこともあったのですが、本人の強い意向もあり、一か月半後にアメリカに向けて出国されました。雨が降っても気分の落ち込みの再発はありませんでした。
カリフォルニアは1年を通じて温暖で湿度も低く、暮らしやすいところと聞いています。「ロンドンに行くというならもう少し治療してから出国した方がいいと言うけれど、カリフォルニアは気候がいいから大丈夫でしょう。」と送り出しました。
 
なぜ雨の日は耳の調子が悪くなるのでしょう。中医学では湿邪により気が滞るためといわれています。実際 鍼灸治療で湿邪をとり気の巡りをよくすると雨の日でも大丈夫になっていきます。耳の症状としては、詰まった感じに加えて、めまいやふらつきが起こる人もいますがこれも治ります。
気象病と呼ばれることもあります。気象病は、太古の昔に危険を回避するためにできた予知機能だという仮説があります。狩りの最中に嵐が来たら、生命の危機です。そこで天候の悪化をいち早く察知する気圧センサーが作られたというのです。
 その「逃避行動仮説」によると、人間は皮膚で気圧の変化を感じ取ると、すぐ走って逃げられるように交感神経が緊張する。それにより耳周辺の筋肉が収縮し、耳が詰まったような感じがするのでは、といわれています。
じつは耳詰まりを訴える患者さんの多くはリラックスするのが下手な人が多いので、「逃避行動仮説」は納得できます。2022年7月掲載

☆その5 
コロナ後遺症の50代女性 味覚障害聴覚障害の治り方、3週間後に突発性難聴も

50代の女性がコロナの濃厚接触者になりました。検査したところコロナ陽性が判明しました。発熱はなかったのですが、検査の3日前、腰とふくらはぎが半日だけ痛みました。
検査の3日後から味覚障害と嗅覚障害がでてきました。3週間後に左耳がおかしくなり、耳鼻科で突発性難聴と診断されました。結(ゆい)には約7週間後に来院されました。
音が2重に聞こえるのがつらいという訴えでした。味覚障害は残り「うまみ」がわかりません。匂いも健康な時を10とすれば2程度でした。
 
3回 治療したところ とうふの味がわかるようになりました。嗅覚も改善しました。自宅の独特の匂いがわかるようになりました。音が2重に聞こえるのもなくなりました。
途中で音が再度 2重に聞こえることもあったのですが、すぐによくなり、結局 一か月に7回治療し、音もはっきり鮮明に聞こえるようになり治療を終わりました。
 
治療後のアンケートでは
「非常に良い効果があった、ほとんど完全に治り苦痛がない」を選択いただきました。治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は0であるとされました。
◆コメント
鍼灸は初めてだったので、当初は不安でしたが予想以上に早く効果が出たことをうれしく感じています。また調子が悪くなった時はお世話になりたいと思います。
※自筆のコメントは以下からどうぞ
 
厚労省が4月に出した「新型コロナ感染症の診療の手引き、罹患後症状のマネジメント」には耳疾患が取り上げられていませんが、結(ゆい)にはコロナが治ったと思ったら耳がおかしくなったという患者さんが多数みえられています。2022年7月掲載

☆その6 
コロナ感染後に突発性難聴になった40代女性、一か月で治りました

二か月半前にコロナにかかり、やっと治ったかなと思ったら、突発性難聴になってしまいました。
コロナにかかってから咳が一か月以上続き、悪寒 下痢 頭痛に苦しみました。二か月後に突然 左耳が聞こえなくなり突発性難聴と診断されました。ステロイド点滴を1週間したところ聴力は70~80デシベルから40~50デシベルまで回復したのですが耳鳴りがあり高い音は響き音が割れます。テレビの音も大きいと苦痛なので字幕で見ているそうです。職場は歯科医さんなので、独特の機械音が苦痛です。耳栓をして勤務されています。
4回ほど治療すると、聴力は25デシベルまで回復しました。音が割れたり、聞こえが悪いのもなくなりました。テレビも音を出して見れるようになりました。ただ職場の機械音が苦痛というのは続きます。
約一か月 8回 治療すると職場の機械音も大丈夫になり、雨の日に調子が悪くなるのもなくなり、卒業していただきました。
 
◆コメント
非常によい効果があった。ほとんど完全に治り苦痛がない。
総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は0である。
 
3割しか完治しないといわれる突発性難聴になり、病院でのステロイド点滴治療で聴力は上がったが耳鳴りや音割れはあまり改善されず日常生活の音さえも苦痛でつらい毎日でしたが、こちらに通いだしてから徐々に音割れが改善され 好きな音楽やテレビが楽しめるようになりました。
歯医者に勤務していたため 独特の機械音が頭に響いて頭痛がしていたが耳栓なしでも働けるようになりました。
今では完治が難しいと言われる程 重症だったのにほとんど元通りになりとても嬉しいです。仕事のグチもたくさん聞いていただきスッキリしました。本当に感謝しています。ありがとうございました。また何かあればよろしくお願い致します。2022年7月掲載
自筆のコメントは以下からご覧ください。
http://yuisuita.sblo.jp/archives/20220708-1.html

☆その7 
40代女性のコロナ後遺症 背中の痛みと倦怠感が続きました

つらい時は結(ゆい)に来てくださる40代女性がコロナに感染されました。コロナに感染したからとキャンセルの電話があって約40日後に来院されました。
のどの痛みから始まり 37度の発熱 関節痛 倦怠感 頭痛が一週間続きました。一人で自宅療養されていたのですが、大阪市からの食糧支援が何もなく友人の差し入れで食べていたそうです。兵庫県尼崎市に住む同僚もコロナにかかったのですが、こちらはすぐに食糧支援が尼崎市から届いたそうです。
出勤した後も息苦しく、背中が痛みます。のども痛みます。倦怠感もずっと続いています。電話で長く話すと声がかすれてくるとのこと。大きな声は出せません。
一度 治療すると「声は出しやすくなった」となりました。
週一で3回ほど治療すると、背中の痛み、のどの痛みはなくなり、倦怠感もなくなりました。
 
もともとハードワークをこなしていた方です。元気になると 今まで控えていた残業や出張もするようになりました。コロナ後遺症の倦怠感は消えたのですが、自宅に戻るのが夜の12時前という働き方が続いているので、週末の疲労感は出てきます。平日はバリバリ働き、週末は ぐったり疲れて結(ゆい)にいらっしゃるといういつもの日常が戻っています。
背中の痛みが続くというコロナ後遺症もあります。痛みをとるのは鍼灸の得意分野です。疲労回復も得意分野です。2022年7月掲載
 
 

 
 

 
 
 
 
 

頭の後ろが重く、集中できない40代の男性

冬になって夜が長くなってくると気分の落ち込む方が増えます。今回は頭の後ろが重くなって、集中できなくなった男性のお話です。

☆頭の後ろが重く、集中できない

××年12月初めに再診の患者さんがいらっしゃいました。40代の男性です。長引く風邪がやっと治ったと思ったら、今度は首の後ろと後頭部が重くなったというのです。集中力もなくなり仕事に身が入らないという訴えです。肩こりはもともとない方です。
週2回に4回の治療で ほぼ症状がなくなったので、1週間あけて5回目の治療の時に 再発なく大丈夫なのを確認し下記のアンケートをいただきました。

◆アンケート結果

非常によい効果があった。ほとんど完全になおり苦痛がない。総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は0である。

◆コメント

内科のお医者さんに「何やろうねぇ?」と言われ不信感をいだき 以前 こちらを利用して良くなった事を思い出し、今回もわらをもつかむ思いで来ました。本当にどうしようもなく仕事にもならなかったので感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。
※自筆のコメントは以下からどうぞ
http://yuisuita.sblo.jp/article/186939205.html

◆考察

この男性は2年前の秋に頭痛と左肘の痛み、左耳の違和感で治療したことがあります。冬季うつ病ほどの症状ではなくても、秋から冬にかけて体調を崩される方は結構 いらっしゃいます。
今回は長引く風邪で消耗して、気が頭まで上がらなくなり、重く感じるようになりました。もう少しひどくなるとフラついたりします。抑うつ症状につながっていく症状です。
鍼灸はひどくなる前にちゃんと治すことができます。

※個人情報保護のため少しだけお話の設定を変えている場合があります。みなさんがこの方のように早く治るわけではありません。個人差があります。

うつ病患者への鍼治療のランダム化比較試験(RCT)で、鍼が深刻なうつ病の症状を減少させることを発見した

うつ病の研究のお話です。私が世話人をつとめる関西中医鍼灸研究会のメンバーには海外の鍼灸情報を精力的に翻訳してくれる頼もしい仲間がいます。早川敏弘先生です。今回は早川先生の情報です。早川先生の要約と原本を参考にさらに藤井が要約したものです。
2018年3月

アメリカ国立医学図書館の医学データベース「パブメド(Pubmed)」に収録されているイギリス・ヨーク大学のマクファーソン教授を中心とした研究チームの論文「慢性痛とウツ病のプライマリケアにおける鍼:研究プログラム」は2017年1月30日に発表されています。
Acupuncture for chronic pain and depression in primary care: a programme of research.
MacPherson et al.
Southampton (UK): NIHR Journals Library; 2017 Jan. 
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28121095

※「パブメド(Pubmed)」には2016年1月に私と日大の酒谷教授の共同研究!「不安レベルへの鍼の効果と前頭前野皮質のNIRS活動計測」も収録されています。

☆うつ病患者への鍼治療のランダム化比較試験(RCT)で、鍼が深刻なうつ病の症状を減少させることを発見した

 イギリス・ヨーク大学の研究チームは、鍼治療を加えると、慢性痛やうつ病に対して、一般治療の効果を促進させることを発見した。
鍼研究の教授でイギリスとアメリカの研究チームといっしょに仕事をしているマクファーソン教授は、一般的な治療を受けている患者群と鍼治療を追加で受けている患者群を対象に研究した。
一般的な治療だけ受けている患者群と比較すると、鍼を加えた場合、明らかに、頭痛や片頭痛の発作を減らし、頸部痛や腰痛を減らした。鍼は、抗炎症剤、鎮痛剤で治療されても痛みがとれなかった変形性関節症の疼痛と機能障害も減らす事を示した。

鍼またはカウンセリングを、抗うつ薬などの薬物療法と比較した新しい臨床試験もおこなった。
北イングランドの755人のうつ病の患者に対し鍼とカウンセリングが、深刻なうつ病の症状を減少させ、治療から1年後もその効果が続いていることを発見した。
鍼をすることができる患者には鍼が効果的だった。何らかの理由から鍼をできない患者にはカウンセリングが効果的だった。鍼もカウンセリングも費用対効果が高い。

「うつ病の治療では、普通は、抗うつ薬を用いる。けど、それは、患者の半分以上に、効かないんだよ。」「鍼の臨床効果の一部には、プラセボ効果もあるかも知れない。でもこの研究は、鍼が慢性痛を減らし、プラセボ鍼よりも効果があるという明確な証拠を示している。」とマクファーソン教授は語る。
マクファーソン教授は続ける。「われわれの新しい研究結果は、慢性痛とうつ病の治療を新しいステップに進めるものだ。なぜなら、患者と専門家は、鍼をもっと自信をもって選択することができる。鍼は、ほかの治療と比べて費用対効果が良いだけじゃなくて、望ましくない副作用を起こす薬を減らして、疼痛や抑うつ気分を減らすことができるんだよ。」

この論文の意図としては以下のように書かれていました。

近年、鍼治療の利用が増加しているが、そのエビデンス(証拠)は確立されていない。臨床効果と費用対効果がはっきりしていない。エビデンスを確立させることで、より多数の患者が鍼治療を利用できるようになるし、政策立案者や意思決定者が鍼治療を政策的に採用していく参考になる。そのためにうつ病の鍼治療のランダム化比較試験(RCT)を行った。

 

不安症状が改善しました。老人性うつ病?認知症?

認知症のお話です。鍼灸治療でも認知症の認知機能については なかなかよくなりません。しかし家族がストレスをうける諸症状、不安でしゃべり続けるとか、電話をかけ続ける、あるいは怒鳴ったりするという症状は結構 早くよくなります。つまり介護する側は楽になります。

☆不安症状が改善しました。老人性うつ病?認知症?

70歳代前半の女性患者が娘さんに連れられて、来院されました。
某大学病院の 老年・高血圧内科に通院され 抗うつ剤 ジェイゾロフトを処方されています。老人性うつ病か認知症かはっきりした診断は出ていないということでした。

ふつうに話はできる状態です。ご家族がお困りなのは、ひんぱんにかかってくる電話でした。女性患者のお連れ合いと娘さんは昼間は仕事に出かけます。すると女性患者さんは何度も2人に電話をかけてきます。たまに電話に出れないことがあると、今度は親戚や知り合いに「棄てられた」と電話をかけるとのこと。数ヶ月前からひどくなったそうです。
「何とかならないか」と当院にいらっしゃいました。ジェイゾロフトで一時的によくなったが、すぐにもとに戻ったとのことでした。
治療中も 何度も娘さんの所在を確認されます。

鍼灸すると うつ病はよくなりますが、認知症の認知機能については なかなかよくなりません。しかし家族がストレスをうける諸症状、不安でしゃべり続けるとか、電話をかけ続ける、あるいは怒鳴ったりするという症状は結構 早くよくなります。つまり介護する側は楽になります。

今回も約20日間に4回治療したところ、電話はほとんどかかってこなくなりました。当初訴えられていた膝の痛みもなくなり、それまで食べられなかった朝食も食べられるようになり治療を終了しました。治療中、何度も娘さんの所在を確認されることもなくなりました。不安でおびえたような顔つきが、にこやかなものに変わりました。2018年3月

※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。

いろいろある『身体表現性障害』の痛みや違和感

「原因の多くは心理的ストレス…腰痛は“気”で治す病だった」という記事が日刊ゲンダイDIGITAL 2016年3月23日に掲載されています。
私も2009年発行の著書「灸法実践マニュアル」の中で「腰痛を伴う心身症」という項目を設けて同様の考えを書いています。「全ての慢性腰痛は心身症である」と。

☆いろいろある『身体表現性障害』の痛みや違和感

著書で取り上げた福島県立医科大学医学部整形外科の先生方も同様の見解で、この記事でも取り上げられています。一部を下記に要約します(要約部分には◆をつけます。私の見解には☆をつけます。)

◆老若男女、多くの人を苦しめている腰痛。そのうちの85%は痛みの原因が分からず、診断がつけられない。どこで診てもらっても、何をしても消えない痛みには、「心」が関係している可能性があることが、近年の研究で分かってきた。
福島県立医科大学医学部整形外科学講座の大谷晃司教授によると
「1つはストレスによって、痛みをコントロールする脳のメカニズムがうまく働かなくなっている場合です。実際よりも痛く感じたり、痛みのもとは消えているのにまだ痛いと神経回路が錯覚したりします。もう1つは、ストレスが体の痛みとして出る場合。仮病ではなく、本人は本当に腰が痛いと感じています。この状態を専門用語で『身体表現性障害』といいます」

☆藤井が日々の臨床の中で、感じていることと同じです。『身体表現性障害』は腰痛に限りません。首の痛み、肩の痛み、顔の痛みといろいろ多彩です。痛みだけでなく違和感とかもやもやとかいろんな形で表現されます。鍼灸のうつ病や双極性障害、パニック障害の治療法を応用しながら治していくと、きれいに治ります。何よりも患者さんを安心させる治療家の姿勢が大切です。
じつは医者や治療家から「治りにくい」「難治性腰痛」とか、治りにくそうな病名、例えば「変形性脊椎症」「腰椎すべり症」とか言われると『身体表現性障害』はますますひどくなります。病名が正しければそれでいいのでしょうか。何か配慮がほしいところです。

福島県立医科大学では抗うつ剤を使うので、「私はうつ病ではない!」という患者さんの心理的抵抗がおこるかもしれませんが、鍼灸では鍼を使うだけなので心理的抵抗はおこりません。

◆いまできること――具体的には「動く」ことだ。最近の医学の常識では、急性・慢性にかかわらず、動いた方が腰痛の治りは早くなるという。
福島県立医科大学医学部整形外科学講座の大谷晃司教授によると
「痛いからじっとしているのではなく、痛くても動けるなら動く。これによって、乱れた脳のメカニズムが正常に整う可能性がありますし、腰回りの筋肉がほぐれて血行が良くなり、結果的に痛みの原因が改善されることも期待できます。そうした運動療法と並行して、患者さんに合わせて痛みを軽くする薬や抗うつ薬などによる治療を行っていきます」

☆結(ゆい)ではまずあらかたの痛みを鍼灸で治してから、動いてもらいます。数回であらかたの痛みはとれます。
痛みで長く安静にしてきたのですから、筋力は弱っています。楽になって動き回ると、衰えていた筋肉が痛みます。患者さんは不安になって「大丈夫ですか?」と聞かれるのですが、私はニコッと笑って「大丈夫です、これは回復に向かう途中に出る痛みですからいい痛みです。そのまま無理のない程度に動いてください」と励まします。再発した痛みも1~2回の鍼灸治療でなくなります。そのうち筋力も回復してきて、たくさん動いても大丈夫になります。腰痛のせいで掃除ができていなかったお家が多いので、家の中がピカピカになります。

◆原因の多くは心理的ストレス…腰痛は“気”で治す病だった
日刊ゲンダイDIGITAL 2016年3月23日
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/177800?utm_content=buffer36bba&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer
 

子育てママの自律神経失調症が1ヶ月でよくなった!

松尾(仮名)さんは小さなお子さん2人の子育て真っ最中の30代の主婦です。2人目のお子さんを出産した6年前から身体の不調に悩まされていました。
とくにここ2~3ヶ月動悸、頭痛、不眠に苦しめられていました。胸の下の方がしめつけられるような痛みもあります。自律神経失調症と診断され心療内科からお薬をもらっていますがなかなか好転しません。眠っても2~3時間で目が覚めてしまいます。

コメントにもあるように、1回の鍼灸治療で寝つきが良くなり、胸の下の方がしめつけられるような痛みが楽になりました。
約1ヶ月 7回の治療をしたところでコメントをいただきました。動悸、頭痛、不眠、胸痛がなくなり、午前中は起きられなかったのが、朝から家事ができるようになりました。

出産は素晴らしいことですが女性の身体にかなりの負担となります。出産後の女性は気血両虚(きけつりょうきょ)という身体の弱った状態です。中医学では1年くらいは養生が必要としています。しかし実際はこの時期こそ赤ちゃん相手に大奮闘する時期、夫や周りがしっかりお母さんを支えることが大切です。

男と女では脳が違います。子育てのしんどい時期、夫がどれだけかかわったかということを女性はしっかり覚えています。20年たっても30年たっても覚えています。女性患者さんが夫に対してもらす本音は私にもずいぶん勉強になりました。
熟年離婚を切り出されてびっくりしないためには、家事育児にしっかりかかわってください。よろしくお願いします。2016年3月

◆アンケートでは「非常によい効果があった。ほとんど完全になおり苦痛がない。」「治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は【0】である」との評価をいただき以下のコメントをいただきました。

◆コメント

6年くらい前から通院し、ここ数ヶ月は投薬やカウンセリングの効果もほとんどなく動悸も薬によって一時的におさえるというつらい状況でした。ホームページで偶然こちらを知り通院したところ1回で寝つきがとても良くなり3.4回めで頭痛もほとんどなくなり、今まで午前中は眠っていることが多かったですが、家事やそのほかにも時間を有効的につかえるようになっています。心療内科でもとても効果が出ていると言われ減薬しています。ありがとうございました。

◆自筆アンケートは以下から
http://yuisuita.sblo.jp/archives/20160314-1.html

※治療効果には個人差があります。みなさんが同じように治るわけではありません。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。

こわいところには鍼をしません。幻肢痛(げんしつう)ファントムペインも治す鍼灸。

☆こわい場所には鍼をしません

結(ゆい)鍼灸院の藤井です。私は患者さんがこわがる場所には鍼をしないことにしています。例えば頭に鍼をされるのがこわい患者さんがいらっしゃいます。

「頭は一番、安全なところなんですよ。頭がい骨というヘルメットのような骨に頭は守られています。鍼はヘルメットの上の皮にするだけです。頭がい骨は硬いので鍼は通りません。それにヘルメットにそって横に鍼をするだけです。」

こういうとたいていの患者さんは、頭に鍼をするのを許してくれます。でも中にはそれでもいやだという方もいらっしゃいます。たいていは別の鍼灸院で頭に鍼をした後、めまいが出た経験のある方です。やり方を工夫すれば、頭に鍼をしてもめまいは出ないのですが、いやがる方に無理強いするようなことはしません。
首がひどくこるのだけれど首、後頭部に鍼をするのはこわいという方もいらっしゃいます。これもなんとかなります。遠慮なくおっしゃってください。言いづらい方はメールかメモをください。

先日は耳が水の中にいるようで、いやな感じがするといって来院された20代の女性がいらっしゃいました。手足も冷え、肩もこります。「年かな」「10代のころはこんなことはなかった」と何度もおっしゃいます。「年は関係ありません」といって治療開始。背中を使う督脈通陽法という私の得意の治療法をしました。背中に棒灸や灸頭鍼をします。
二回ほど治療したら手足も暖かくなり、肩こりもなくなりました。耳も不快感を感じていない時の方が長くなってきました。混んだ電車に乗ると気分が悪くなっていたのがなくなり、バーゲンに行けると喜んでいらっしゃいました。軽いパニック障害のような症状があったようです。何より疲れなくなったそうです。

いつも通り治療をしようとすると、背中を使わない治療はできないかと相談されました。背中側に他人に回られるのがどうも苦手とのこと。治療のために我慢してこられたのですが、ここまでよくなってくれば他のやり方でもなんとかなるのではとお考えになったようです。背中側から鍼をしたり温灸をしたりする治療はやめにすることにしました。
慣れないハイヒールを履いてから脚と腰が痛いという訴えだったのですが、背中や腰に鍼をすることなくちゃんとその場で痛みをとりました。
鍼灸はいろんなやり方があります。患部を使わないでも治療はできます。お尻を見られるのが嫌だからと、痔のことを隠される女性もいらっしゃいますが大丈夫です。お尻に鍼をしなくても治療はできます。

☆幻肢痛(げんしつう)ファントムペインも治す鍼灸

病気や事故等で手足を切断した場合、切断した筈の手や足が痛むという症状があります。幻肢痛とかファントムペインといいます。原因不明とされていますが、鍼灸は幻肢痛を治療することもできます。幻肢痛の方はぜひ鍼灸をお試しください。

お盆前に気分の落ち込む患者さん じつは家族との関係?

8月初旬頃から気分が落ち込んだり、体調が悪化する患者さんたちがいらっしゃいます。原因は家族との関係です。
職場で帰省や夏休みが話題になる。テレビで家族旅行に出かける姿、帰省ラッシュの様子も流されます。「みんな楽しそうですね」というコメントがかぶさります。
家族は素晴らしいものですが、素晴らしい家族ばかりではありません。
毎晩 母親から電話がかかってきて数時間、愚痴を聞かされる。「いいかげんにして」というと泣かれる、親不孝となじられる。
毎日「勉強ができない」「おまえは頭が悪い」「出来そこないだ」と言われ続ける。ちょっと成績がよくなっても、ほめられるどころか「今度は○○番以内に入りなさい」と命令される。緊張で交感神経が亢進しすぎて抹消の血管が縮まり、ひどい肩こりや手足の冷えに苦しむ。
子供は親を選べません。問題のある親の子供は自分に問題があると自分を責め、自分を大切にする感情を育むこともなく、自信を失ったまま成人となります。
家族とのお盆の再開がストレスになっている方はたくさんいらっしゃるのです。親と会わない選択をされている方で、会わない自分を責める方もいらっしゃいます。

親との再会がストレスだと自覚されている方はまだいいのですが、自覚できないまま、お盆や正月前に体調を崩したり、気分が落ち込んだりする方もいらっしゃいます。
親と会うことがストレスだと思っていけないと、自分の感情にふたをして見ないようにされています。なぜ体調が悪くなるのか、不安をなくすために時によっては、親のことを指摘させていただくこともあります。何もいわず淡々と治療して身体と脳を楽にするだけのこともあります。

トラウマをなくす、緩和する鍼灸治療もあります。お悩みの方はご相談ください。
/acupuncture/depression/

楽しいことを人は吹聴しますが、都合の悪いことは隠します。家族がストレスになっている方に知っておいてほしいことがあります。みんな楽しくやっているようにみえても、装っている場合もあるのです。悩んでいる人はあなたのほかにもいらっしゃいます。あなたは一人ではありません。

2015年8月

会社に行くとおなかが痛くなるという症状がとれたら肩こりもなくなりました。

中村さん(仮名)は30代の女性、PMS(月経前症候群)の治療をご希望で来院されたのですが、いつも肩がこる、会社に行くとおなかが痛くなる、ふらっとするという症状をおもちです。ふらっとするのは貧血のため仕方がないと自分ではおっしゃいます。
自分で原因を断定し、自分で納得されている患者さんは結構いらっしゃいます。

ふつうに治療するとたしかに身体は楽になるのですが、しばらくするとまた肩がこってきます。そこで思考鍼をしてみました。
思考鍼とは理由なき恐怖心や心的外傷(トラウマ)をなくす鍼灸のやり方です。あるツボに鍼をして一定の刺激をしている時に、恐怖の対象や過去の衝撃をうけた出来事を思い出してもらうやり方です。出社した自分の姿を鍼をしながら想像してもらいました。
おなかが痛くなりましたが、別のつぼに鍼をして腹痛をとりました。今度は出社を想像しても腹痛は出なくなりました。

しばらくして来院されたので症状をお聞きすると、会社に行くとおなかが痛くなる、ふらっとするという症状はなくなりついでに「いつも肩がこる」と言われていた肩こりもなくなっていました。おなかが痛くなるのは過度の緊張のためです。いつも緊張していると肩がこるのも当たり前です。思考鍼が過度に緊張する状態をリセットしてくれたのです。

治療終了後にアンケートをいただきました。

◆アンケートでは「非常によい効果があった。ほとんど完全になおり苦痛がない。」「治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は【2】である」との評価をいただき以下のコメントをいただきました。

◆コメント
朝 会社に行く時のめまい、貧血、胃の痛みが大分よくなりました。体調もじょじょによくなっていると思います。肩こりも楽になりました。

湿疹と不眠がつながっている? 気分障害または概日リズム睡眠障害、睡眠相後退症候群(DSPS)?

島田(仮名)さんは30代初めの青年です。数年前は全般性不安障害、パニック障害と診断され当院に治療に来られていました。当時の鍼灸治療の一番の目的は不安で乗れない新幹線に乗れるようになることで、それはうまくいき治療は終了しました。
 

今回は4ヶ月前から夜、眠れず、昼間 起きていられないという症状がひどくなったと来院されました。睡眠導入剤も効きません。昼間起きているよう努力はするのですが、たまらず寝ることもよくあるようです。こま切れの質の悪い睡眠の典型です。
2ヶ月前からは身体中に湿疹が出るようになり、夜はかゆみがひどくなりよけいに眠れない。概日リズム睡眠障害、睡眠相後退症候群(DSPS)ともみえるような症状ですが、この場合は気分障害からくるものなのでしょう。島田さんは今回は気分障害と診断されているようです。気分障害とはうつ病や双極性障害を含む広い概念です。
数年前のような不安感はなくなったとのことですが、抗うつ剤は飲み続けていて、疲れやすさ、手足のしびれ感の訴えもあります。

1ヶ月に5回治療したところ、夜はすぐに眠れるようになり、昼は起きていられるようになりました。2回ほど治療したところでかゆみが引き始め、3週間後には湿疹はきれいに消えました。眠れなくなると、だんだんと身体を落ち着かせる陰(いん)という成分が減少し、皮膚のかゆみになり、やがて湿疹になることがあります。こういう時、伝統的中医学では睡眠と湿疹を一連のものと考えて治療します。みなさんも睡眠時間が極端に少なかった時、妙に興奮した経験はありませんか。身体を落ち着かせる陰(いん)が減っているからです。
 

◆アンケートでは「非常によい効果があった、ほとんど完全になおり苦痛がない」を選択。以下のようなコメントをいただきました。
 

当初の気分障害での体のだるさ、日中起きていられない、夜の睡眠障害、体全体の湿疹に悩まされてきました。2回ほどの治療で夜もぐっすり寝つけるようになり、4ヶ月間毎日飲んでいた睡眠導入剤も全くいらなくなりました。それに伴って約一週間ほどで湿疹もほとんどひいていきました。同じく体のだるさも、一週間ほどでかなりなくなり、昼からも動けるようになりました。コメント以上

月経前症候群(PMS)が治った。抗うつ剤(SSRI)もやめた。(患者さんの声)

田丸(仮名)さんは20代後半の女性です。長く月経前症候群(PMS)に苦しまれていました。月経前10日~7日前から気分が落ち込み、身体がだるくなります。ピルを飲んだこともありますがうまくいきませんでした。体調を崩して職場をやめた時に心療内科に通い始め、抗うつ剤(SSRI)パキシルを飲み始めて3年になります。アルバイトに半年前から行き始め本人いわく「なんとか続いている」状態です。
本人の希望もあり月経前10日の間に2回ほど治療することにしました。2ヶ月すると月経前の気持ちの落ち込みもなく生理痛もほとんどなくなりました。パキシルをやめたいという本人の希望で週に1回治療するように変更。1ヶ月かけて薬を減らし、ついに薬をやめることに成功。さらに1ヶ月治療してから、アンケートを書いてもらいました。治療を始めて2ヶ月で月経前症候群(PMS)が治り、3ヶ月目には抗うつ剤(SSRI)をやめることができました。
田丸さんは以下のように回答されました。
◎非常によい効果があった、ほとんど完全に治り苦痛がない。
◎治療前の苦痛を10とすれば今は1である。

ひどい時は2週間前から気持ちが不安定になり、だるくて何もしたくない気持ちになっていたのですが、治療していただき不安定になっても1~2日で済むようになりました。すこしずつ体のだるさが軽減されていき気分に体調がひっぱられないようになっていきました。肩こりもかなり減りました。その中で以前はいろいろなことに落ち込みがちだったのを「過ぎたことは過ぎたこと、今は今」と頭をきりかえていけるのも早くなりました。薬であまり考えないようにしていたのですが、今は薬を飲まず、考えても落ち込まず、冷静に落ち着ける時間が増えた気がします。仕事も抱えすぎずしんどくならないようにこなせるようになりました。本当にありがとうございました。

以上

田丸さんはたんなる月経前症候群(PMS)だけでなく抑うつ状態にあったようです。心療内科では簡単に薬がでますが、私はちょっと疑問に思っています。日本うつ病学会が今年7月にうつ病の治療指針を出し安易な抗うつ剤の使用をいましめています。

詳しくは7月31日付けのブログをご覧ください。

http://yuisuita.sblo.jp/archives/20120731-1.html

 

自筆のアンケートの回答はこちらから

 

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※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。

うつ病からの回復 (患者さんの声)

田辺(仮名)さんからのメール

長らくお世話になりました。田辺(仮名)です。
おかげさまで、体調も大変良くなり、日常生活を難なく過ごしております。
最初に通院し始めた頃を振り返ると、驚くばかりです。
> 設問
> 2. よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。

> 回答
> 以上 1~4のうち、私は【2】です(数字を記入願います)
> 総合的にいって治療前の苦痛を10とすれば今の苦痛は【1 】である。

あとは生活習慣であるとか、性格とか価値観などの内面の問題だと思いましたので、身体に負担がかからないようほどほどに生きていこうと思った次第です。 メールで失礼いたしますが、本当にありがとうございました。
また体調に不具合のある際には、治療をお願いしたく思っております。


20XX年3月~翌年の4月まで約1年治療しました。田辺(仮名)さんは30代の男性です。今はうつ病もすっかり回復、新しい職場で元気に正社員として勤務されています。
20XX年3月時点では数ヶ月前に長年勤めていた会社をうつ病で退職されたところでした。3年ほどは休職と復職を繰り返していたそうです。ある資格試験に向けて勉強されていました。治療を始めて1ヶ月ほどたった頃のメールです。

田辺(仮名)さんからのメール
おかげさまでからだの根っこの部分が、軽くなってきているような気がしております。
ただ、胃腸風邪らしき症状の方が、すぐれず、とりわけ背中が痛く、頭がボーっとして何にも集中できないという状態になっています。
食欲は無いわけではないですが、いつもよりは控え目です。下痢は続いています。
目の疲れはひどいです。試験が近いこともあり、それに対する「単なる」プレッシャーかとは思います。
中略
気分的には「焦り」というレベルではなく「大変に焦っている四面楚歌」というところまで来ていると思いますし次の職についても「厳しい雇用情勢」という暗いニュースばかりです。
市販の風邪薬であるとか、ユンケルのような滋養強壮剤は併用してもよろしいのでしょうか。 昨年、退職するまでは、一日あたり栄養ドリンク2本、○○ナミン錠剤3錠 タバコ1日2箱、清涼菓子1日1箱、コーヒー1日6~7杯というような状況で無理をして仕事をしていました。
いまさら栄養ドリンクの類には頼りたくない・・・という思いがあります。
しかし、試験まであと○○日しかないということもあり、なんとか態勢を立て直したいというのも切なる思いです。何か全てに疲れました。本日、伺いますので、 どうぞよろしくお願いします。


この時はなかなかしんどそうだったのですが、その後は資格試験に無事合格、新しい職場にも就職され仕事も慣れたあたりで、結(ゆい)を卒業していかれました。

家族といっしょに治す。老人性うつ病

半健康人から脱出! 結(ゆい)通信 2011/5/11より

素人の私たちでは、本人がなぜ苦しいのか、という基本的な原因すらわからず、困惑しております。 ある患者のお孫さんからメールで質問がきました。

お孫さん
私には現在、○○市に77歳の祖父がおります。 祖父は過去に肝臓と、肺気腫で入院治療しておりました。 10年ほど前に、風邪をこじらし、寝込んだのち、精神神経科に通院しておりました。そこでは、正確な病名は忘れてしまったのですが、抗うつ剤を処方され、 後10年服用し続けています。最近では、胸の苦しさや、頭痛を訴え、その都度頓服を服用するという毎日です。日増しに、その訴えが増えたので、総合病院に かかり検査もしましたが、異常は見つかりませんでした。
本人は、非常につらいと思いますが、病院嫌いであり、治療に対して前向きにはなれないでいます。物忘れもあり、痴呆が始まっているようにも見受けられます。また、無気力であり、悲観的な面もあるので、うつ病の懸念もあります。
ともかく、素人の私たちでは、本人がなぜ苦しいのか、という基本的な原因すらわからず、困惑しております。
◆私 
メールの文章から受けた印象では 老人性うつ病の疑いを感じます。私は針灸の仕事をしておりますし、針灸治療も選択のひとつではないかと思いますが、とに かく患者さんを丁寧にみて患者さんの誇りを傷つけないようにあつかってくださるような医療機関にかかられることをお勧めします。
お孫さん 
先生のおっしゃられる通りだと思います。祖父は、以前、総合病院に連れて行ったときに、まともな治療をしてもらえず、かなりのショックを受けていたと聞き ました。もともとプライドが高く、頑固な気質もあり、最近では病院にいくことが嫌になっているようです。まわりにいる私たち自身も、どこかで祖父の誇りを 傷つける言動をしていたかもしれません。これを期に、親族全員で考えていきたいと思います。
お孫さん 
今日、母から結(ゆい)針灸院にうかがった際の報告を受け取りました。お忙しい中、ご丁寧に診療してくださり、大変にありがとうございました。祖父も「頭痛が楽になり、今まで苦しかったが、やっと良くなった。」と大変に喜んでおりました。
メール引用以上

初診では「メールで受けていた印象よりあなたは元気だ。身体も年のわりにはしっかりしている。ただ身体のバランスが乱れている。バ ランスを回復するのはそうむずかしいことではない。治療すれば楽になる」と患者さんを励ましました。いままで否定的なことばかりいわれていたことが予想で きますから、励みになるような言葉が必要です。痴呆ではなく老人性うつ病と判断しました。
最初は車に乗せてもらって来院されましたが、2回目は電車利用。電車に乗ったのは15年ぶりとのこと。結局3回の治療で「胸の苦しさや頭痛等がなくなった。頸のつらさもない。」ということで治療を終了しました。遠方からの来院も負担のためです。
老人性うつ病の治療は針灸治療に加え家族の協力と理解が大切です。高齢でも意外と早く治ります。


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パニック障害、全般性不安障害やうつ病、自律神経失調症にも急な寒さはよくありません

半健康人から脱出! 結(ゆい)通信No.287 2011/2/16より

自分をコントロールする 急に寒くなると意外な症状も悪化します。パニック障害、全般性不安障害の方やうつ病、自律神経失調症の方の中には不安感が強くなったり、息苦しさや吐き気が強くなったりした方がいらっしゃるはずです。寒さもストレス、寒さが気のめぐりを滞らせて症状がひどくなります。部屋全体を適度に暖めてください。針灸治療を受けていただければ一番いいのですが、部屋を適度に暖めるだけでもある程度改善します。

とくに朝、起きる時に部屋が暖まっていることが大切です。
オイルヒーターや床暖房をつけたままにして部屋を暖めたり、エアコンやファンヒーターを起床の1時間ほど前につけたり、いろいろと工夫してみてください。先日治療したパニック障害の女性の不安感がなかなかおさまりませんでした。よくよく聞くとエアコンが故障し、寒さに震えていらっしゃいました。エアコンが直ると、針灸治療も効きがよくなり不安感もなくなりました。「暖めるだけでこれだけ違うんですね。」とその女性。患者さんの生活上の問題点を探り当て、適切に指導していくことも大切な治療です。「こうすると悪くなる」を体得した患者さんは自分をコントロールすることがうまくなり、ちょっとした症状の悪化にもあわてなくなります。結(ゆい)針灸院は針灸だけで治療しているわけではないのです。

※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。

うつ病にならない仕事の仕方

半健康人から脱出!結(ゆい)通信No.279と280 2011年1月より

うつ病や自律神経失調症の患者さんを多数治療してます うつ病や自律神経失調症の患者さんを多数治療しています。今回は仕事の仕方のお話です。うつ病や自律神経失調症の患者さんに質問することがあります。

A.人当たりもよく、仕事はすぐに引き受けてくれて、それなりにしっかりやってくれるのだけれど1~2ヶ月もすると急に病欠で2~3日休んでしまい、仕事が予定通りに進まなくなる部下。

B.仕事を回そうとすると、「ここまでは出来るけれどこれ以上はできません」とはっきり言う。少々生意気なところもあるが、その代わり引き受けた仕事はきちんとこなしている部下。仕事が少し遅れることはあるが、遅れることを途中で報告してくる。会社を突然休むこともない。

あなたが上司だったらどちらの部下が使いやすいですか、信頼できますかと質問します。患者さんは仕事を抱え込みすぎたり、無理な要求を「はいはい」と引き受けたりする傾向の方が多いのです。できない量の仕事を抱え込んで倒れるよりは、適正な量の仕事をきちんと安定してこなしていく方があなたにも、上司にも会社にもいいのではないのでしょうかと話します。
あなたが倒れると上司も監督責任を問われます。できない上司、わかってくれない上司かもしれないけれど上司もつらいのです。仕事を抱え込みすぎるあなたの傾向を見抜き、適正な仕事量を按配し、うまくいったらきちんとほめてくれる。そういう理想的な上司はそうそういるものではありません。これ以上はできませんとはっきり主張しわかってもらうことは大切です。正しい、間違っているという話しではありません、交渉して妥協点をみつけてください。そんなふうに言う時もあります。

鍼灸治療して回復していくと、患者さんは落ち着きをとりもどし、仕事に優先順位をつけてなんとか処理していけるようになります。つらかった頃に戻らないように仕事量を調整します。「何であんなに、ものにとりつかれていたように働いていたんだろう」という声も聞きました。鍼灸治療は元気になるだけでなく不安をなくし落ち着きを取り戻す効果があるのです。
うつ病や自律神経失調症にならないにこしたことはありません。時には少しだけアクセルをゆるめましょう。仕事にメリハリをつけるのです。「商売は牛のよだれのごとく」という言葉もあります。牛のよだれのように細く、長く、粘り強く続けていくことが大切という意味。人生は結構長いもの。低成長時代の今、燃え尽きるより「牛のよだれ」です。


うつ病を経験して変わった仕事の仕方 うれしい便りをいただきました。前号の「うつ病にならない仕事の仕方」を読んだ読者の方からのメールです。
この方はうつ病で休職された後、見事に職場復帰された結(ゆい)の患者さんです。うつ病を経験し人生をもっと楽しむようになった方です。

こんにちは、先生。今年の年始年末休みと、この連休も、ゆっくりと過ごせました。
いままでにない、とても心地いい、お正月でした。
結(ゆい)通信No.279「うつ病にならない仕事の仕方」を、拝読させて頂き、ふっとX年前の今ごろの時期を思い出して、自分ながら、「ぷっと」おかしく笑う思いです。X年前は子どもが生まれたことなどで、ごたごたしていて、仕事も「やらねばらならい」の極致でした。視野、考え方もピンポイント的に狭くなり、自分で自分を追い込んでいました。

今、思うと、偏った自信があり、その自信が仕事を抱え込み、限界を超えていたことに気付かない状態だったと思います。それでも「やらなければならない」という気持ちが先行していました。

初めて、結針灸院に来院して、初診問診の時に、真摯に私の症状を聞いて貰えた時には、本当に安堵な気持ちなりました。今更ながらですが、感謝をしております。
今は、楽観と緊張の調和を図るようにしております。仕事では、やることはきっちりとやる。(まぁ、これは当たり前ですが)できないことはできないと割りきり、自分の立場より1、2段上の立場でものごとを考える。メリハリをつけるようにしています。
プライベートでは、すべてを楽しむように考えています。

例えば、家族サービスも自分が楽しくなければ、家族も楽しくないと思います。自分も楽しみ、家族も楽しむというふうにしています。


※某読者からのメールを掲載していますが、個人情報保護の観点から、読者の年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少し変えている場合があります。ご了承ください。某読者さんメール掲載を快諾してくださりありがとうございました。

10年近く続いたうつ病、パニック障害の治り方、2010年の治療例

半健康人から脱出!結(ゆい)通信 2010/10月号より

2010年の治療例 畠山(仮名)さんは30代後半の女性。約10年間パニック障害に苦しまれました。
1年前の引越しを契機に、うつ病も併発。動悸がして息がつまる、家事も仕事もできなくなり横になってばかりという状態でした。「人の声が幕がはったように聞こえる」という突発性難聴に似た症状もありました。結(ゆい)には家族に付き添われて来院されました。

手には真新しいリストカットの痕があります。週2回のペースで針灸治療を開始しました。家族の方が嫌がる畠山さんを説得し、引っ張ってこられたと後で聞きました。
2回の治療で発作が出なくなり「ラムネのように何錠もかじっていた」という頓服薬(抗不安薬)をやめることができました。数回の治療の後は自分で車を運転して治療にみえられるようになりました。

1ヶ月で料理ができるまでに回復。1ヶ月半後には抗うつ薬(SSRI)を今までの四分の一にまで減薬することができました。
2ヶ月半後には週2回の通院を1回に減らし、仕事も再開されました。
アンケートをお願いしたところ「何年も病人生活が身についている私は、良くなった生活がわからず、普通はどれ?どれ?ととまどう毎日でしたが今はがんばって体も生活に慣れて生活を送っています」との回答をいただきました。
当初すっぴんだったお顔がきれいにお化粧されるようになったのが印象的でした。「手が震えてメイクできなかった」「何をする気もおきなかった」とのことです。症状が良くなるのも早かったのですが、減薬もかなり早いペースで行われました。担当医の先生が畠山さんの意志を尊重されてのことでしょう。

副鼻腔炎、頚椎症、脊中管狭窄症、前立腺肥大症、うつ病と診断された患者さん

半健康人から脱出!結(ゆい)通信No.216 2009/06/24より

副鼻腔炎、頚椎症、脊中管狭窄症、前立腺肥大症、うつ病と診断された患者さん みなさんは、病気のデパートのような 患者さんと思われるかもしれませんが、 これぐらいあわせ持つ患者さんは当院では、 そう珍しくはありません。病気は身体の中心線の 任脈(にんみゃく)督脈(とくみゃく)という経絡、 気の流れの上にあります。 任脈督脈をうまく調整していくと、すべての病気 を一度に改善させていくことができます。

貝原(仮名)さんは50代初めの男性、うつ病で休職と復職を何度かされていま す。なんとか復職したものの、もうひとつ身体がすっきりしない、不安感が強く、 眠れないということで09年2月下旬に来院されました。お医者さまからは上記 のようにたくさんの病名をいただいています。数年前に貝原さんの腰のX線写真 をみたお医者さまは「よく歩けますね。70代の老人のような腰の骨ですよ」と 言われたそうで、脊中管狭窄症からくる足のしびれについてはあきらめていらっ しゃいました。
一ヶ月に6回ほど治療したところ、普通に不安感なく仕事ができるようになり、 自殺衝動もなくなりました。よく眠れます。副鼻腔炎からの鼻汁も出なくなり、 呼吸も楽になりました。前立腺肥大症も改善し、小水もすっきり出るようになり ました。足のしびれはなくなりましたが、腰痛が残りました。
その後、週一回の治療を続けたところ、5月の終わりには腰痛もなくなり、頚椎 症からの手のしびれも消えました。5月は神戸発の新型インフルエンザに関連し て貝原さんの仕事が多忙となったのですが、これも乗り切ることができました。
新型インフルエンザ騒動の時に、不安感やうつ症状が再発しなかったので「大丈 夫!あなたはもう治っているよ」と励ましたことが記憶に残っています。
腰のX線写真の様子は今も数年前と同じ筈ですが、きちんと気がめぐるようにな ると症状は消えます。骨は治らなくても、病気は治ります。
※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。
ご了承ください。

復職がまにあってよかった2009年

☆まにあってよかった☆ 「復職の時期が、まにあってよかったですね。もうリハビリ勤務も終わりでしょう。」

まにあってよかった1月終わりの山口さん(仮名)との会話です。
ある大手メーカー社員の山口さんとは半年近いお付き合い。
30代の男性です。うつ病で半年の休職の後、リハビリ勤務で 職場復帰したけれど身体と頭がいまひとつ思うように動かない ということで結(ゆい)にいらっしゃいました。
針灸で頭痛や腰痛や手のしびれもよくなりました。集中力も続きます。
リーマンショックの後、少しだけ体調を崩されましたがこれも回復しました。
大手企業でも正社員を標的にした人員整理の動きが一部で始まっています。
完全復帰が今の時期にできてよかった、人員整理の標的にならずにすんだという意味で「まにあってよかった」という言葉になりました。


☆欠勤続きだったけど、まにあってよかった☆ 吉永さん(仮名)は40代の女性、腰痛肩こりがひどい、何よりこの疲れた顔がなんとかならないかということで 1月中旬に来院されました。美容鍼がご希望でした。

まにあってよかったよくよく話を聞くと、年末からの風邪が治らない、身体が 疲れてどうしよもない、会社も何日か欠勤してしまったと いうのです。
疲れた顔も身体もなんとかしましょうということで治療を開始、2月初旬にはす っかり元気になりました。
後で話を聞くと、昨年職場を変えて以降、仕事がきつくなった。最近は集中力がなくなり会社にいくのがつらくなっていた。仕事を続けていけるのか自信がなくなっていたとのことでした。うつ病一歩手前といったところです。休職の手前で踏みとどまることができました。「あんまり仕事を引き受けすぎないようにしてください、無理して仕事をかかえこまないようにしてください」とお願いしました。
こちらも「まにあってよかった」というところです。
倒れるまで仕事をする前に休んでください。針灸で身体を調整してください。
針灸はあなたのまにあうはずです。


※治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。 ご了承ください。

2008年うつ病パニック障害の治り方、 秋の章

半健康人から脱出!結(ゆい)通信No.196  2008年10月 2010年5月改訂


パニック障害の方が近頃はよく来院されています。
今回、紹介するのはお薬を使わず針灸だけで治った例です。


☆パワーハラスメントがらみでした☆ 藤田 鉄也さん(仮名)は40代の有名大企業の会社員です。

パニック状態2週間前、仕事中にパニック状態になり、翌週から会社のある駅で降りられなくなったということで来院されました。うつ病の診断を受けています。昨年の今頃いらっしゃいました。症状からピンときたので、2回目の治療の時にお聞きしました。
「あなたがパニック状態になるとき、誰か特定の方がいらっしゃいませんか」と。
やはりパワーハラスメントでした。ある上司に注意されている時に限ってパニック状態が襲ってくるのです。本人は気づいていませんでした。気づきたくなかったのかもしれません。

いったん3ヶ月の休職をするということだったので、復職の時は必ず配転をして、パワハラ上司とはいっしょにならないようお願いしました。

職場の配転もうまくいき2008年初頭には別の場所にある同じ企業の職場に復職。リハビリ勤務を経て、今は第一線で元気に働いていらっしゃいます。投薬は続いていますがまずまずの回復です。

休職中から復職2ヶ月程度は週2回の治療を続け、後は週1回 今は疲労回復と脳を活性化する治療を続けています。

【追記】 2011年夏にはお薬もやめ、元気に働いていらっしゃいます。


☆二人目が欲しいから☆ 五十嵐 君子さん(仮名)は30代初めの女性。専業主婦です。
2008年7月頃に来院されました。

不安感、むかつき、頭痛に苦しむ4年前、初めて出産。出産後1年たった頃から不安感にさいなまれるようになり、不安障害の診断を受けました。SSRI等の抗うつ剤の投薬を開始。夫と子どもの3人暮らしでしたが家事も満足にできず生活に支障をきたすようになったため子どもと一緒に実家にもどりました。その後は改善したため実家から夫のもとに戻ることができました。5月からSSRI等の抗うつ剤をやめ、抗不安薬1つだけにしたとのこと。そこから不安感、むかつき、頭痛に苦しむようになりました。2人目の出産を希望しているので、ここでSSRIにもどりたくない。ここ何日か身体がだるく背筋も伸ばせない、別の針灸院で何回か針をしたがいよいよしんどくなってしまう。なんとかならないか。ということで来院されました。

7月に3回治療して頭痛 肩こりはなくなりました。背筋もしっかりのびます。

まだ吐き気 むかつきが残ります。

8月いっぱい治療してほぼ症状はなくなり、薬もすべてやめることができました。20XX年には無事、第2子を出産。不安障害等の再発もなく元気に過ごされています。

針のやり方は治療する鍼灸師によって違います。一度針をしてうまくいかなかったからといって針灸全般を避けないでください。あわない薬があるようにあわない針のやり方もあるのです。たいていは温灸を併用するとあうようになります。きちんと効くようになります。


※ 治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの名前を仮名としているほか、年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。 ご了承ください。

抗うつ薬、抗不安薬を減薬、やめるための鍼灸

半健康人から脱出!結(ゆい)通信No.171  2007/10/3より

10/3の朝日新聞に次のような記事が載っていました。

覚せい作用のある向精神薬リタリンで薬物依存が起きている問題で、厚生労働省と製造販売元のノバルティスファーマ社は2日、リタリンを処方できる医師や医療機関を限定するなど流通を規制する方針を固めた。薬物依存者が求めるまま、過剰処方している医師の存在が相次いで発覚したため、医療用麻薬並みの厳しい管理をする。 リタリンから抜け出すための針灸 向精神薬「リタリン」の乱用問題で依存症に苦しむ家族会が9月下旬に要望書を出しています。
製薬会社もこれまで、「治りにくいうつ病の薬」としていたのをやめる方針のようです。これで保険診療では使えなくなりますが、自由診療でも簡単に処方できなくするために「リタリン」を使える医師を限定してしまおうというのが今日の記事です。

結(ゆい)にも「リタリン」を飲んでいらっしゃる患者さんがいました。
何年もうつ病に苦しんでいた30代の女性です。結(ゆい)に来院された当時は仕事もやめ、「リタリン」も含め7種類の抗うつ薬、抗不安薬を飲まれていました。 それでもやる気が出ない、すぐに横になりたくなる、1日中ぼおっとしている、悲しくなり泣くことがあるなどいろんな症状をお持ちでした。

時々、中断しながら1年間治療させていただきました。

抗うつ薬、抗不安薬も4種類に減り、残ったお薬もこれまでの3分の1の量ですむようになりました。症状はほぼなくなり、仕事もできるようになりました。遠方に転居されることになり、薬を全部手放すところまではいきませんでしたが、回復されたといえるでしょう。「リタリン」もやめました。


抗うつ薬、抗不安薬をやめるための鍼灸 じつは抗うつ薬、抗不安薬など、薬を減らしていきたい、薬をやめたいから針灸治療を受けてみたいという患者さんが時々来院されます。
ほとんどが20代~30代前半の女性の方です。将来の出産のために薬をやめたいというのがその理由。
一生懸命、お手伝いさせていただいています。

抗うつ薬、抗不安薬などを減らしていきたい、やめていきたいという方はどうぞ針灸をお試しください。

うつ病の治り方

結(ゆい)通信No.168 ///////// 2007/08/02

針灸が非常によく効いた例です。毎回、こういう訳にはいきません。

30代後半の女性、2人の小さなお子さんがいらっしゃいます。2人目の出産直後から調子を崩され、育児が十分にできなくなりました。
うつ病と診断され複数の薬を飲むようになりました。周りのサポートでなんとか育児をつづけていらっしゃいます。寝たり起きたりの生活が1年ほど続いています。

「とにかくしんどい」「やる気がおきない」「朝が起きづらい」「こめかみが痛む」「不安だ」等々いろいろつらい症状があります。

結(ゆい)での治療に加え、自宅でお灸(温灸)をしていただくよう指導しました。
2週間のうちに3回ほど治療すると、朝きちんと起床できるようになりました。
さらに2週間ほどして、「足が猛烈に痛くなった」と来院されました。
調子がよくなったので、家事育児をがんばりすぎたのです。寝たり起きたりの生活の中で弱ってしまった足腰を急に酷使しすぎたのでしょう。
うつ病になる方には、真面目でがんばりすぎる方が多いものです。

3週間ほどして5回目に来院されたときには薬も一種類だけに減っていました。
家事育児も独力でこなせるようになったとのこと。「疲れをためないよう時々、来院ください」とお願いしておきました。

今回は非常によく効いた例を紹介しました。普通はもう少しかかります。


エアコンの使い方 お休みになる時のエアコンの設定温度に気をつけてください。 家族の方に遠慮して寒いのを我慢していると、身体の陽の気が損なわれます。身体の活動性が低下し身体がだるくなります。
陽の気が損なわれるとうつ状態にもなりやすくなります。
昼間はきちんとエアコンをつけて、疲れないように動いてください。もちろん設定温度は28度以上で。
地球のためにもあなた自身のためにも低くしすぎないようにお願いします。

なお、治療例は個人情報保護の観点から、患者さんの年齢、状況を大勢に影響ない範囲で少しだけ変えている場合があります。ご了承ください。

うつ病どんなふうに治るの?2006年版

半健康人から脱出!結(ゆい)通信No.137 2006/10/19

うつ病とひとくちにいっても、仕事を続けながら「なんとなく調子が悪い」といったものから、仕事も続けられなくなり職場をやめてしまっている方までさまざまです。
うつ病という病名は10年ほど前からずいぶん広い意味で使われるようになりました。そのためか若い人ほどうつ病と診断されることにさほど抵抗感がないようです。プチうつという言葉まであります。
最近治療した方から3例を紹介させていただきます。


パニック障害がからんだ40代男性 40代男性が梅雨の頃にいらっしゃいました。
メモをお持ちでそこには症状が箇条書きにしてありました。
ふらつき感。肩のこりはり。頭がのぼせ、ぼおっとする感じ、顔がほてる感じ。急に手足の力が抜けるような感じ。朝早く目が覚めてしまう。イライラする時がある。疲れやすく身体が重い。以上
4~5日に一回、頭がのぼせ手足の力が抜ける感じがして不安感に襲われる。医者からは「パニック障害」と診断されているとのこと。職場のある場所に入るとおこってしまうそうです。両手にしびれ感もありました。こういう症状が1年ぐらい前から続いているといいます。精神安定剤を飲みながら、なんとか仕事は続けていらっしゃいました。

この方は3週間、7回の針灸治療で治りました。安定剤も飲まなくても大丈夫になりました。
肩こりはすぐに消失、疲れやすさも感じなくなりました。顔のほてる感じが最後まで残りましたが、これも消失。治癒(ちゆ)としました。パニック障害がらみでは早く治ったほうです。パニック障害は「電車に乗るのがしんどい」という方が多いのですが、この患者さん、電車は大丈夫で、通院が無理なくできて助かりました。


☆いつも横になっているのは治ったが☆ 30代の男性である大企業の社員の方です。
うつ病のため1年近く休職、なんとか職場復帰したものの3~4ヶ月で再び休職。気分が落ち込み、昼も夜も寝てばかりいる毎日だといいます。奥さんに連れられて来院されました。奥さんは昔、結(ゆい)である病気が治ったことがありました。
遠方の方なので、針灸治療は週一回として、毎日 自宅でお灸をやってもらうよう指導しました。お灸といっても温和な熱で跡のつかないタイプです。

1ヶ月ぐらいたったところで、患者さんが重い口を開きました。「第一回目の治療の後、夜になると目がさえるようになり、眠れない」と言われます。身体の変化は毎回治療を始める前に聞いていたのですが、不十分でした。男性のうつの患者さんの中にはなかなか自分のことを話されない方がいらっしゃいます。もう少し配慮が必要でした。

うつ病にもいろいろな状態があります。昼も夜も寝てばかりいる状態を治すのと、昼夜逆転を治すのでは治療の仕方が変わります。治療法をかえると今度は週のうち半分程度は昼間きちんと起きて夜には眠れるようになりました。最初の1回の治療で脳が活性化し、夜起きるようになるとは、実はこちらも予想していなかったので対応が遅れてしまいましたが、改めて針灸の治療効果に驚きました。
治療をはじめて2ヶ月で復職、それから2ヶ月して治療を終わりました。


疲れがとれて、顔やせもした女性の話 9月中旬に今岡さん(仮名)がいらっしゃいました。
40代半ばの女性、自宅で親の介護をはじめて6~7年になります。遠方にお住まいで「疲れた、肩がこった」ということで数ヶ月に1度くらい来院される方です。 今回はとくに疲れがひどいようで「身体がだるい、重い」「とにかくしんどい」「ふらつく、頭がぼおっとする」「目の周りがこる」「目の奥が重くて痛い」という訴え。「近くでマッサージしてもらっても一向によくならない」ということで当院にいらっしゃいました。いつもの肩こりはあまり感じないさそうです。続けて2回、治療してなんとか身体が動くようになりました。
うつ状態に陥りつつあるという自覚は今岡さんにもあり、「なんとか鍼灸で治したい」ということでした。10月に4回ほど治療してすっかりよくなりました。後で聞くと、おしっこの出が悪くなっていたのも治ったとのこと。
鍼灸を再開して2回ほどすると周りから「痩せた?」と聞かれるようになったといいます。体重が減ったわけではないのですが、顔のたるみがとれたので、痩せたようにみえたのです。顔の黒ずみも消えています。今岡さんも「疲れると顔がたるんでくる」「顔がかわる」とおっしゃっていました。 顔には脳を活性化する働きを持つつぼがあるので、私はうつ状態の治療に時々、顔に鍼をうちます。顔の鍼はたるみやしわをとるので、「痩せた?」と聞かれるようになった訳です。

いつもの肩こりは10月半ばに出てきて、いつものように治しました。じつは生体のエネルギーである「気」があまりに消耗してしまうと肩こりは感じなくなることが多いのです。かわりに「重い、だるい、しんどい、ふらつく」となります。「気」が復活してくると、肩こりも復活します。肩こりは「気」が適当に滞ったものだからです。「気」があまりに消耗すると、滞ることもありません。
ちょっと元気になると、しんどい時にはほっておいた掃除などの家事をしっかりやるようになりますから、筋肉痛タイプの肩こりも出るようになります。

半健康人から脱出!

結(ゆい)通信No.55 ///////// 2003/10/19より

50号でうつ病について書いてから、何人かの読者の方と直接、お話ししました(読者=患者さんということも多いのです)精神的な症状というと、西洋薬を飲むか、カウンセリングを受けるかという選択しかないと思い込んでいる方が多いのには驚かされます。

精神疾患の薬の本格的な登場は1960年代から、カウンセリングも1900年代にフロイトが精神分析を始めてからというくらいの歴史しかありません。
それ以前から人は精神を病むことはあったし、治療もあったのです。


養生は精神をすこやかにすることにも通じます 東アジアでは漢方薬や針灸が大切な治療方法でしたし、現在もそのことに変わりはありません。

伝統的中国医学はもともと心と身体をいっしょに考えています。たとえば肺が調子悪くなると、うつうつとした憂いの感情や悲しみの感情にとらわれやすくなると考えます。こんこんと小さく咳を繰り返す患者さんが「どうもやる気がでない」といえば、肺の調子を治すことで、やる気も自然に出てくると考えるのです。 「どうもやる気がでない」「生きているのがいやになる」という患者さんに「部屋の冷房の温度を20度から26度程度に上げることができないかなあ」と助言したりします。

養生は精神をすこやかにすることにも通じます。
例えば、うつ病は 現在では心と身体を活性化するセロトニンやノルアドレナリンといった脳内神経伝達物質の減少によって引き起こされると考えられるようになりました。西洋医学流に心と身体をいっしょに考えるようになったのです。脳を含む身体全体の調整をすることが、神経伝達物質の分泌異常を調整していくことにつながります。

針灸で うつ病の症状が楽になっていく事実から、神経伝達物質の分泌異常を針灸治療が調整していると考えられます。ただ、ここに針をするとセロトニンが分泌されるといったつぼがあるわけではありません。
中国伝統医学の考え方で、いろいろ考えて治療しているだけです。別の道から山を登っているのです。


とことんひどくする前に、気楽に針灸を 抗うつ剤の場合は、最初の2~3週間は副作用だけがでてくる。薬が効いてくるのに2~3週間はかかるといわれています。

薬をやめていくのにも かなりの期間が必要です。新薬のSSRI(選択的セロトニン再取込阻害薬)も「半年~2年くらいは続けることになると思います」と紹介されています。

ちょっとしんどい時に、気楽に治療を受けられ、気楽に治療をやめられる針灸が精神疾患で、もう少し活用されるようになればみんなもうちょっと楽になるのになあ、薬と併用してもいいし、とぼそぼそつぶやいています。

軽症うつ病、昔から治療してきました

結(ゆい)通信 第50号 2003/10/07より

昔は神経症や軽いうつ病なんかはまとめて 自律神経失調症と呼ばれていました。
私のところにも「自律神経が悪いんです」といって来院される患者さんがよくいらっしゃいました。 最近は○○神経症(たとえば強迫神経症)やパニック障害、軽症うつ病と比較的はっきりした病名になり、「軽いうつ病なんです」とか「うつ病かもしれない」といってみえられます。

つらい症状をあらかた伺って、「パニック障害という言葉、聞いたことありますか」と質問すると「医者からそう言われました」と返事が返ってくる時もあります。様変わりしました。

○○神経症と診断してしまうと患者さんもびっくりするし、職場の受けも悪いから、医師も自律神経失調症と言っておく。昔はそんな感じでした。
不況、リストラ等によって精神疾患が増えたといわれています。
たしかにそうなのでしょうが、精神疾患への偏見が和らいだことも、精神疾患の増加に影響しているようです。

偏見が強ければ、だれも精神科には行きませんから、精神疾患とカウントされることもありません。


精神疾患は増えているらしいが 昔、「自律神経が悪いんです」といって来院された患者さんも、今「軽いうつ病なんです」といってみえられる患者さんも実際、同じような症状です。
だるい、疲れやすい、肩がこる、手足がしびれる、寝つきがわるい、朝 早く目が覚めてしまう、あるいは眠くて眠くて仕方がない等々。
自律神経失調症に鍼灸は効くといわれてきましたが、軽いうつ病も同じように鍼灸は効きます。
じつは名前が変わっただけだからです。

いやな時代になって、うつ病も増えたと感じること、間違いではありませんが、呼び方が変わって、身近に増えたように感じてしまっている部分もあるようです。
自律神経失調症でテレビのCMはなかったですが、うつ病ではテレビのCMが流れています。製薬会社が抗うつ剤の売り上げを伸ばすために流したもの。特集番組も多くなっています。
うつ病が増えたと感じる意識にこれらも影響を与えています。確かに「いやな時代」かもしれないけれど、とんでもなく「いやな時代」というわけでもないのかもしれません。


精神安定剤と鍼灸の併用は大丈夫 50号でうつ病について書いたら読者から抗うつ剤、精神安定剤、睡眠薬等の薬との併用はどうですかというメールをいただきました。

結論からいうとなんの問題もありません。

抗うつ剤、精神安定剤、睡眠薬等のお薬を飲んでいらっしゃる方の鍼灸治療はたくさんやっています。 併用した場合、本来のつらい症状が早く楽になります。副作用も楽になります。
鍼灸治療の場合は本来のつらい症状も、薬の副作用もいっしょに軽減させていきます。これによって薬の効きが悪くなるということはありません。逆に薬の効きがよくなることが多いので、患者さんにその旨をお伝えしています。
薬の量を軽減することができます(あくまで薬を処方しているお医者様と相談してから減らしてください)薬の量を減らせることで、より副作用をなくすことができます。

うつ病 標準治療例

半健康人から脱出!結(ゆい)通信No.71より 2004/03/24

うつ病はどんなふうに治るの?結(ゆい)の場合 メールマガジン結(ゆい)通信70号で老人性のうつ病のことを書いたら、一般的なうつ病はどれぐらいかかるのですかという質問が来ました。
個人差が大きく いちがいにはいえないのですが、最近 私が治療した中から軽症 重症 2人の方を紹介し回答とします。


調子悪くなってから2ヶ月で治療開始した場合 田無さん(仮名)という20代後半の男性。昨年8月終わりに治療を開始しました。

午前中は ぼおっとしやすい。朝はだるい。手足が冷たい。手にしびれ感がある。頭はだるいと訴えていらっしゃいました。
激務を続けているうち、6月ごろから眠れなくなったそうです。
仕事を減らしながらも、仕事は続けていらっしゃいました。抗うつ剤も飲んでいらっしゃいました。
10月終わりまで 9回ほど鍼灸治療をしました。この時点で、眠りが浅いこと以外、自覚症状はないというところまで治りました。

薬は10月中旬にやめることができました。 その後 12月中旬まで4回ほど治療し終了しました。
3月初めに「先生、お元気ですか?治療のおかげもあって、うつの症状も改善し、不眠の症状も改善し、2004年は仕事面で良いスタートがきれました。」との様子を知らせるメールをいただきました。


10年前からのパニック障害にうつ病を併発 田無さんは軽い症例でした。

次に紹介する玉本さん(仮名)は30代前半の男性で、こちらは重い症例です。
うつ病のほかに10年前から続くパニック障害の訴えもありました。
肩こりがひどく、1日中 ほとんど寝ているとのこと。1日のうち1時間 仕事でパソコンに向かうとそれだけで疲労する。

5年前に会社をやめてからは、別の会社に就職しても2、3ヶ月ほどするとやる気を失い、辞めてしまう。
2年前からは仕事についていない。家事もできない。食器を洗おうとすると落としてしまう。食欲はあるが食べたら気持ち悪くなる。
手足はパニック発作の時は冷える。吐き気がありおなががはるという訴えでした。

SSRI、SNRIを含めいろんな抗うつ剤を処方されましたが、副作用がひどく、抗うつ薬による治療ができないという状態でした。
昨年10月終わりから一ヶ月ほどかけて、9回治療したところ「5年前にひどくなる直前の状態にもどった気がする」という感想をいただくという状態となりました。その後 1月中旬まで11回ほど治療したところ、1日 8~12時間程度 パソコンに向かって仕事ができるようになりました。
すでにうつ病とは呼べない状態です。

パニック障害については、以前は電車に乗ることを考えただけで吐き気がしていたそうですが、平気で電車に乗って出かけられるようになりました。玉本さんはちょっと小太りのむくみのあるような体型だったのですが、すっきりとやせることができました。

現在は一年を通して症状のあるアレルギー性鼻炎の治療に取り組んでいます。こちらも花粉症の時期にもかかわらず、快方に向かっています。

まずは一ヶ月の治療 うつ病は個人差はありますが、大体 一ヶ月きちんと治療を受けていただければ結果を出せると考えています。
週2回一ヶ月 8回が理想的です。抗うつ剤の場合は、最初の2~3週間は副作用だけがでてくる。薬が効いてくるのに2~3週間はかかるといわれています。薬をやめていくのにも かなりの期間が必要です。

鍼灸単独でも十分 治療できます。抗うつ剤併用でも治療できます。

老人性うつ病のお話し

半健康人から脱出!結(ゆい)通信No.70より 2004/03/16

アルツハイマー性痴ほうが治る?実は! 3月の関西中医鍼灸研究会でアルツハイマー性の痴ほうと診断された男性老人が2週間に4回の鍼灸治療で治ったという症例が報告されました。
アルツハイマー性の痴ほうがそんな短期間に治るはずがありません。怪訝(けげん)に思っていると、報告者は苦笑いしながらこう付け加えました。

「最初のアルツハイマー性の痴ほうという診断が誤診だったんですよ。患者さんは結局 老人性うつ病だったんですよ。」と。

痴ほう症と老人性うつ病は紛らわしいものです。医師も誤診しやすいといわれています。
老人性うつ病には鍼灸はよく効きますし、抗うつ剤も効果があります。


痴ほうの評価表は万能ではない 年をとり、物忘れがひどくなりぼおっとしてくると、周りは痴ほうを疑います。けれど周囲に対して無関心になり、思考力や集中力が低下する症状は老人性うつ病でもみられるため、紛らわしいのです。
一般的に痴ほう症の診断には「改訂長谷川式」といわれる評価表が使われますが、患者さんが答えるのがおっくうなくらい疲れていたり、何でこんな若造(医師)のあほな質問に答えんといかんのかと怒りを感じたりしたら誤診を招きます。
「私がこれから言う数字を逆から言って下さい。6-8-2を逆に言ってください」とか「100引く7は」と聞かれてあなたは平静でいられますか。


老人性うつ病は鍼灸へ1ヶ月程度 評判のいい鍼灸院のところへ連れて行ってあげてください。
1ヶ月程度で症状が改善すれば、痴ほうではありません。

患者さんも楽になりますが、周囲の家族も大助かりです。
関西中医鍼灸研究会で2週間に4回の鍼灸治療で治ったと報告があったように、劇的によくなる場合もあります。抗うつ剤は、服用し始めてから効果が出るまでに2週間ぐらいかかるのが普通です。また抗うつ剤は、喉(のど)の渇き、便秘、だるさ、眠気、低血圧などの副作用があります。

周囲に対して無関心になり、ぼうっとしてきたお年寄りに、副作用を納得して飲み続けてもらうのは大変ではないでしょうか。老人は身体も薬の解毒作用も弱っているため、本来は抗うつ剤の量も少量から慎重にはじめる必要があります。
私は まずは鍼灸から始めることをお勧めします。

心の風邪と鍼灸の話

神経症やうつ病などを 心の風邪といういう言方があります。身体が風邪をひくように心も風邪をひく。精神症状を特別視しないでという気持ちがこめられています。 中医学は心と身体をそもそも別のものとしていません。 ヨーロッパやアメリカでは精神をキリスト教の一部の考え方の影響から、特別視していました。 これに対し、中医学(中国の伝統医学)は身体と心を一体のものとして、治療をしてきました。 関西中医鍼灸研究会で、中医学の立場から漢方薬を使って治療されている精神科医師の渡辺先生の話を聞きました。
ここでは一部を抜粋してお伝えします。

藤井
「本日の中医研講座は、大阪府吹田市のJR吹田駅前で開業されている、精神科医師である、さわらび診療所の渡辺先生に講演をお願いしました。わたしたちが日常で出会う患者さんは神経症、精神病の既往歴をもっている方々がいらっしゃいます。」
渡辺先生
「わたしがいわゆる精神科・神経科を標榜するクリニックを吹田ではじめて十年ぐらいになるのですけど、通院している患者さんで鍼灸の治療を同時にされている患者さんはたくさんいらっしゃいますし、藤井さんにもお願いしてお世話になってきたわけです。精神科神経科領域で鍼灸の治療を受けている患者さんは確かに多いです。
精神科の病気 外因―脳に影響を与えるハッキリとした原因がある。
脳器質性 ―例:脳腫瘍、脳炎、痴呆、癲癇
中毒性 ―例:アルコール中毒、覚醒剤中毒
症候性 ―例:膠原病、感染症
心因―心理的葛藤が原因
例:不安神経症、心気神経症、強迫神経症、PTSD
内因―現代医学ではまだ、原因が解明されていない
例:精神分裂病、非定型精神病、気分障害
まず精神科では外因、心因、内因という分類を昔から使っています。
外因とは脳に明らかに原因があるとわかっている病気です。脳腫瘍、脳炎、痴呆などです。または中毒性の病気です。覚醒剤中毒やアルコール中毒が中毒性の病気になります。内科疾患でも精神症状を呈する病気があります。
心因は心理的葛藤などが原因であるというものです。神経症や心気神経症、不安神経症、性格障害、PTSDなどはこの範疇に入ります。神経症は鍼灸の先生方にもよくこられるのでないかと思います。 内因はいわゆる精神病です。心因などの原因がはっきりとわからないものです。現代医学では、まだ原因がわかっていません。精神分裂病、非定形精神病などが内因の範疇に入ります。
最近は気分障害とか感情障害と呼ぶことが多いですが、いわゆる躁鬱病などもこの範疇に入ります。


心の風邪の代表的なもの パニック障害 藤井
不安神経症とほぼ同じような意味です。私も鍼灸でよく治療しています。肩がこるとかいうことで来られることがおおいのですが、診断すると大体わかるので、「胸が苦しくなったり、のどがつまってくるようなことがありませんか」とこちらから聞きだします。鍼灸も良く効きます。 心因性と一応 分類されていますが、中医学では消化器の状態、つまり胃腸の状態が大きく関係していると考えています。実際、体調が悪化した時に出てくる場合が多いようです。
一般にはストレス社会だから増えているといわれていますが、それだけでなく食べ物を含む生活様式の変化が大きく関係していると考えています。
28歳男性、パニック障害 1.経過

急に息苦しくなり呼吸が止まるのではないかと心配になり、救急車で市民病院に行く。
過換気症候群なので、ビニール袋をかぶって呼吸するようにと言われ、安定剤を一錠もらって帰った。
証券会社に営業マンとして勤めていたが、バブル崩壊で仕事がしんどくなった。毎日帰宅が遅いうえ、仕事を家に持ち帰ったり、会社がどうなるかわからないので、休日にも将来に備えて資格をとるべく勉強するなど本を読んだりして、子供の相手をする時間も無い生活が続いていた。
発作が起こり、会社にもいけなくなるのではないかという不安がつのるうちに、明け方にまた発作が起きて前回と同様に救急受診し、同様の処置で帰宅する。
発作の起こり方は、まず喉が苦しくなり、ついで胸が苦しくなり、息が吸い込みにくくなり、急速に不安が強まる。特に吸い込みにくい感じが強い。

診療所に来られて、診断書を書いて会社を一週間休むように指示する。会社を一週間休み、十分休息をとり、かなりおちついた。残業と仕事の持ち帰りをやめ、休日は運動や子供の遊び相手をするようになってから、発作はおきなくなった。薬物も臨時薬を携行して不安をコントロールできるようになり、やや薬物に対する依存ができかけたので、自律訓練法をマスターするようにして薬物からも離れることができた。
よく話を聞くと仕事のことだけでなく、離れて暮らしていた両親が年をとってきたので、近く親と同居する予定であること、さらにローンの返済について悩みがあった。仲人である会社の上司から仕事についてハッパをかけられることがあったなどの事情もかさなっていたことがわかった。


2.一般的な経過

ストレスの持続+新しいストレスの重なり→症状のでる前の心気的な状態→疲労を乗り越えてがんばる(あるいはがんばらねば成らない状況)→発症

渡辺先生
「パニック障害はたいてい持続的なストレスがあります。PTSDのように突発的なストレスではなく、持続的なストレスです。ストレスの無い方はいないわけですが、それだけならなんとか頑張れます。それにさらに別のストレスが加わるとしんどくなります。それで疲れやすい、眠りにくいというような前駆的症状がありますが、それでも頑張って乗り越えないといけないと思い、無理を重ねます。そしてある日突然、症状が出ます。」
○症状のさまざま
いきぐるしい、動悸が止まらない、冷や汗が出る、心臓がとまって死ぬのではないかと思う、気が狂ってしまうのではないかという不安。
発作が起こったらと思うと電車にのれない、買い物に行けない(広場恐怖、閉所恐怖)。

渡辺先生
「発作が起こったらと思うと電車に乗れない、途中で降りられない特急や急行に乗れない、あるいは会社にいけないという深刻な状態となります。パニック障害のかたは早めに治療を受けるとそのような不安発作を乗り越えられますが、大抵の場合、最初は内科にいかれます。内科では精神安定剤や睡眠薬を出されます。しかし、これは一時凌ぎであり、根本的克服ではありません。そうして時間がたつと慢性化する可能性があります。」
漢方の有効性―梅核気など。 渡辺先生
「わたしはこのようなパニック障害に対するファーストチョイスはほとんど漢方薬です。それはいろいろ理由があるのですが、安定剤は効きますが、副作用として眠い、だるいという症状があります。急性期にはトランキライザーですが、長期的には漢方薬で改善していきます。だから急性期にはトランキライザーと漢方薬の併用となります」
心の風邪その2 うつ病 藤井
うつ病もよくある病気です。周りの人々に理解されにくく「がんばれ」とか「しっかりしろ」とか言われて傷ついてしまうことが多い病気です。 患者さんは充分にがんばっているのです。がんばりすぎてなってしまう病気なのに、「がんばれ」といわれたらたまったものではありません。
いろんな身体症状も出るので、鍼灸院を、軽い段階で(重くなると自宅にひきこもられますので)訪れる患者さんもいらっしゃいます。鍼灸もよく効きます。症状を軽くしてなんとか日常生活を楽にすごしていけるようにしていきます。お薬との併用もなんの問題もありません。
うつ病の治療には 私は督脈通陽法という独特の治療法を用いています。
うつ病というところまでいかなくても、身体が重い、何をする気力もおきないといった状態に鍼灸治療は効きます。当たり前ですが、こういう軽い段階の方が早く治ります。
65歳男性、反応性うつ病 高血圧で治療を受けていた。その診療所からの紹介。
退職して今後の人生設計を考えていた矢先に阪神大震災に遭う。新神戸の住んでいたマンションが半壊する。再建の会議の世話人をしていた。五十世帯の大きなマンションであり、やっかいな仕事だった。五月頃から、めまい、吐き気、不眠を訴える。内科的な検査では高血圧の他には異常なし。

受診時の問診
「何のために生きているのかと思う。よき父親として、よき夫としてどうしたら全うできるのかと...」 「さいきんテレビをみる気もしない、本も読めない。集中できない」
ねつきが悪い、眠り浅い、早く目が覚める。
頭が午前中ぼんやりしている。 目がまぶしい。
(渡辺先生「目がまぶしいというのはうつ病、神経症でよくある訴えです。内科などで目がまぶしいと訴えてもほとんど取り上げられません。わたしはストレスから来る疾患での一つの特徴だと思います」)
口が乾く、小便が近い。
食欲が無い。二ヶ月で3キロ痩せた。

同伴した妻の話
性格はすごく几帳面で真面目。最近ひどく心配性になり、妻の外出も心配で「早く帰れ」と言う。待合室でもこんなところ(精神科)に来ることになって...とショックを受けている。
(渡辺先生「うつ病になる性格はまじめで几帳面な性格が多く、人から頼まれたら嫌といえないタイプです」) 経過
服薬、断りにくかった役職を断る。二ヶ月で不眠が治り、食欲も回復する。

渡辺先生 「こういう方には背負っている荷物を軽くするということでマンションの世話人という役職を降りてもらいました。」 うつ状態に一番のクスリは休息です うつ病については「患者さんと家族、会社の上司に現在の状態を説明する。うつ状態であり、病気なので治る」と説明することが大切になります。
精神主義というか、根性で頑張れとかいうことはいまでもあります。やる気をだせば、できると激励してしまうことは多いです。そして患者自身さんも「病気なんかに逃げてはいけない」とか「たるんでいる」とか「甘えている」と考えて、「頑張ろう」と思ってしまいます。

うつ状態に一番のクスリは休息です。最近は風邪をひいてもカゼ薬を飲んで、会社にいきますね。「風邪ぐらいで休むなんて何事だ」という感じです。そうしてコジらせていって、結局は休むことになります。 そこでお墨付きとして、医者が診断書を書いて休んでもらいます。少し深い症状なら、クスリが必要です。クスリには抵抗が強いですが、副作用について説明してきちん飲んでいただくことが大事です。

藤井 「鍼灸師は現状では 精神科のお医者さまほど権威がありません。鍼灸師の診断 では会社が納得しないでしょう。診断書を書いて休んでもらうわけにはいかないので、 必要に応じて精神科を紹介するか、休養を進めつづけることになります。ただ針灸治 療によって 仕事を継続可能と判断した場合は、短期間のお休みをとることを進めるだ けの場合もあります。針灸治療がそれだけ症状を緩和できるということです。」 うつ病は三ヶ月も治療したら、ほとんどよくなります うつ病は三ヶ月も治療したら、ほとんどよくなります。90パーセントは回復します。
しかし、それぐらい時間がかかるとも言えます。中途半端によくなったからと言って、途中で治療をやめることはいけません。うつ病のクスリというのは、回復を早めるわけではなく、症状を浅くする側面があり、途中でやめるとまた最初からという話になります。
うつ病のクスリは、傷のカサブタと同じで、完全に傷が治癒しないうちにカサブタをはがすとまた傷から出血します。
うつ病で一番心配なのは自殺です。うつの極期では、自殺念慮はあっても自殺するだけのエネルギーはありません。うつ病では回復期が一番あぶないです。だから、きちんとした手当てが必要です。


うつ病の期間中は重大な決断はぜったいにしないことです うつ病の間には「会社をやめる」とか「離婚する」と言い出します。
しかし、これは後悔します。うつ病の期間中は重大な決断はぜったいにしないことです。うつ病が治ってからなら、「こんなツラい会社は辞める」というなら良いですが、うつ病の間は問題を先延ばしにして結論をださないことです。