ストレス脳の共同研究

ストレス脳の共同研究がまとまりました。

日本大学医学部(2019年現在は東京大学大学院)の酒谷 薫教授とストレス脳の共同研究をしていましたが、2014年7月にロンドンの国際学会(ISOTT2014)で「不安レベルへの鍼の効果と前頭前野皮質のNIRS活動計測」として発表されました。日本では私が2014年9月13日日本中医学会第4回学術総会で発表しました。

☆ ロンドンの国際学会で発表!「不安レベルへの鍼の効果と前頭前野皮質のNIRS活動計測」

ストレス脳とは脳のオーバーワークなどが原因でストレスに過敏に反応し、 オーバーヒート気味の脳の事。ひどい肩こりや頭痛、腰痛に隠れていることもあります。
近赤外分光法(NIRS)、光で脳機能を測定する技術を用いて脳のストレス状態を計りました。脳(前頭前皮質)の右側と左側で血流(酸化ヘモグロビン)を計測。血流の左右差が多い人はストレス度が高く、少ない人はストレス度が低いといわれています。

鍼治療によって血流の左右差が多い人たちの70パーセントの左右差が少なくなり、あわせて心理テストの結果も改善されました。
初診の時に診断し、数回の鍼灸治療の後、自覚症状が改善した時点で再度診断したものです。
鍼治療が不安を改善させるという効果が患者さん自身の感覚だけでなく、近赤外分光法(NIRS)診断でも明らかになりました。協力いただいた患者のみなさまありがとうございました。

私はロンドンには行きませんが、酒谷教授の共同研究者として発表されます。 今後はストレス脳のNIRSでの計測はいったんお休みとさせていただきます。

☆ISOTTは学際的な国際学会

http://www.isott2014.org/ 今年で42回目となるISOTT、International Society on Oxygen Transport to Tissueは体の様々な臓器における酸素輸送に関する広い議論のための国際学会で医師だけでなく生理学者、物理学者、エンジニア、生化学者や数学者が集っています。
今年の講演の題目をいくつか並べてみるとわかります。
「ミトコンドリアおよび細胞増殖」「脳循環代謝、神経血管メカニズムと出生後の脳の発達」 「救急医学における酸素輸送の謎」「低酸素に対する人間の適応:エベレストからの教訓」 「ミトコンドリア:複雑さへの鍵」「高地トレーニング及びEPOドーピング後酸素運搬」
以上のような具合です。酒谷教授も医学部脳神経外科と工学部電気電子工学科を兼任されています。そのような学会で鍼灸の効果が発表されることは、鍼灸のより科学的な解明へと道を拓くものとなるでしょう。

神戸東洋医療学院講師 早川敏弘先生からは以下のようなコメントをいただいています。

現代の針灸研究の一つの特徴は、NIRSやfMRIといった最新機器を使った生体測定です。
NIRSを使った研究は意外なほど少なく、アメリカ国立医学図書館のPUBMEDデーターベースで「acupuncture NIRS」の検索キーワードで検索しても、わずか7論文がヒットしただけでした。
しかも、不安を対象としたものは他に有りませんでした。これは発表の意義がかなりあります。昨年はイギリスのヒュー・マクファーソンがウツに対する鍼の臨床試験結果を発表し、アメリカではPTSDの治療法として注目されており、鍼による精神症状治療は社会的意義も大きいです。

☆ 日本中医学会第4回学術総会で発表!「鍼灸がちゃんと効いたとき、脳はどうなっているのか NIRSで調べてみました」副題「不安レベルへの鍼の効果と前頭前野皮質のNIRS活動計測」

私と酒谷薫先生(日本大学工学部・次世代工学技術研究センター統合生体医療工学研究室教授医学部・脳神経外科兼担 当時 2019年現在は東京大学大学院)竹村尚大先生( 独立行政法人 情報通信機構 脳情報通信融合研究センター研究員)の3人の共同研究ですが、今回は私と竹村先生が登壇しました。酒谷教授はISOTT(International Society on Oxygen Transport to Tissue)というロンドンで7月に開催された学会で発表されています。ロンドンでも好評だったと聞いています。 壇上でNIRSと鍼灸治療を実際にやってみせるという企画も好評でした。

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酒谷薫先生は2012年5月16日放送の「たけしのみんなの家庭医学」に出演、ストレス脳についてわかりやすく
解説されています。酒谷先生は他にも、NHKの「あさイチ」にも出演されています。


脳科学研究

近赤外分光法(NIRS)、光で脳機能を測定する技術を用いて脳のストレス状態を計ります。
一定期間の鍼灸治療の後、再度計測、治療で脳の血流がどう変化したかを調べる研究です。

鍼灸治療をすると、たしかに患者さんはよくなっていきます。けれど、どの程度良くなっていったかは、
患者さんの感覚、楽になった感じに頼るしかありませんでした。
NIRS(ニルス)は脳のストレス状態が どう変化していったのかを、光を使って客観的に画像で計測することが出来ます。

ストレス改善、病気回復の客観的指標となる可能性があります。
光ですから、安全です。レントゲンの被爆のような危険はありまえせん。

ストレスを判断するのは、脳の中で認知・思考・言語をつかさどっている前頭葉です。
図のようにストレス負荷を与えた時の、前頭葉の活動パターを計測すると、 身体のストレス反応が強く出る人は、右前頭葉優位になる傾向があります。
ストレス反応は、ストレスから身を守るための防御反応です。

ストレス反応のメカニズム

前頭葉がストレスを判断すると、ストレスから身体を守るために、
視床下部から自律神経と内分泌系を経由して臓器や器官に指示を出しますが、
長い間、過度なストレスを受けると自律神経や内分泌系、免疫系にまで影響を及ぼし、
ホメオスタシス(恒常性の維持機能)が壊れてしまいます。
普通の状態でなくなるのです。
このため、さまざまな身体の不具合が出てきます。

2016年1月追記

「不安レベルでの鍼の効果と前頭前野皮質でのNIRS計測」がアメリカ国立衛生研究所(NIH)のアメリカ国立医学図書館(US National Library of Medicine)の医学データベース「パブメド(Pubmed)」に収録されました。

「NIRS(近赤外分光装置)による不安と前頭葉活動に対する鍼の効果:パイロットスタディ」 Effects of Acupuncture on Anxiety Levels and Prefrontal Cortex Activity Measured by Near-Infrared Spectroscopy: A Pilot Study K. Sakatani、, M. Fujii、 N. Takemura、 T. Hirayama Oxygen Transport to Tissue XXXVII Volume 876 of the series Advances in Experimental Medicine and Biology pp 297-302 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26782225

ストレス脳の診断中です。

主に初診や再診の患者さんの一部を対象に、測定しています。
あなたの脳のストレス度がわかります。測定はあくまで患者さんの同意をいただいてから。
簡単な心理テストとNIRSの測定をやります。15分~20分かかります。

NIRSの測定の様子