男性は脳血管障害をおこして緊急入院1週間。結(ゆい)には発症から約40日後に来院されました。脳血管障害のひとつで脳幹梗塞の中の延髄梗塞(えんずいこうそく)でした。脳の延髄の一部が壊死するために、めまい、嚥下困難、声がれ、顔の感覚異常、片側の筋力低下などの症状を引き起こすことがあります。呼吸が停止する場合もあります。
男性は幸いにも身体の動きに大きな障害は残らず、退院後は自営業を再開されていました。ただ複視になっていて、これが仕事をやりづらくしていました。複視とは物が二重に見える症状のことです。本来は一つに見えるはずの物体が、ずれて二つに見えたり、縦や斜めにずれて見えたりします。眼球運動をつかさどる神経や脳幹が障害されることでおこります。
ほかには眼が不随意に細かく揺れる眼振(がんしん)や身体がゆれて急に力が入りにくくなる運動障害がありました。
2カ月間に14回 治療したところ複視は治り、運動障害も改善しました。複視が治ったことで患者さん本人の希望もあり、治療を終了しました。
当初は仕事の関係から「週1回ぐらいしか難しい」と言われていたのですが、男性の娘さんの強いプッシュと治療効果を途中で実感されたためか週2回来ていただき治すことができました。当院への来院も娘さんの強い意向で実現したものです。脳血管障害の治療は本当は毎日か隔日が望ましいのですが、日本ではなかなかむずかしいものがあります。
◆アンケート よい効果があった。少し苦痛はあるがずいぶん楽になった。
◆患者さんのコメント
複視がほぼ無くなりました。ありがとうございます。以上 2025年8月掲載
2007年5月19日に関西中医鍼灸研究会で脳血管障害の後遺症の治療法、醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)の講義と実技講習をしたのですが、リハビリに針灸が効くということをメルマガでお伝えしていないなということに気がつきました。
脳卒中、脳血管障害の後遺症の針灸治療はできるだけ早く
脳卒中の後の後遺症、手が動かない、足が動かない、しゃべりにくい等々の治療に針灸はよく効きます。
ただ日本では病院のリハビリに針灸が取り入れられている所は非常に少ないのです。
先日の関西中医鍼灸研究会には大阪のある公立病院のリハビリテーション科の医師が参加され、熱心に学んでいらっしゃいましたが、こういう先生は本当に少ないのです。
そのためリハビリに針灸が効くということも日本ではほとんど知られていません。
結(ゆい)針灸整骨院にも脳卒中、脳血管障害の後遺症の治療に来院されますが、ほとんどの場合、発作をおこして針灸治療を開始するまでの期間が長すぎるのです。
「病院でいろいろリハビリをやったがいまひとつ治らない」「病院のリハビリも終わってしまった」「針灸でなんとかならないだろうか」というような具合です。
それだけ期間が開いていても一定の治療効果は上がるのですが、治療開始が早ければ早いほどきちんと効くのもまた事実です。
脳卒中、脳血管障害の後遺症の針灸治療はできるだけ早く、できれば3ヶ月以内に、遅くても半年以内に開始してください。
脳血管障害後遺症に醒脳開竅法
醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)という脳血管障害、脳卒中後遺症の鍼灸治療法があります。中国の天津中医薬大学で開発されたやり方で、約20年ほど前に日本に紹介されました。私も当時、一生懸命修得しました。固まってしまった手の指が、すぐに動くようになったり、固まって動かない肩やひじが動くようになったりします。よく効く治療法ですが、太い鍼を自在に操る技術が必要です。
吹田で開業し「街の治療家」となってからは醒脳開竅法を活用する機会はめっきり減ってしまいました。発症して半年ほどの間が一番、回復する時期なのですが、この時期に脳卒中後遺症の患者さんが街の治療院を訪れることはまずないからです。鍼灸が脳血管障害、脳卒中後遺症に効くという事実も日本では、あまり知られていません。
入院中は仕方がないですが、退院してリハビリに通うようになったら是非、鍼灸もリハビリのひとつに加えてほしいものです。劇的な効果が見込めます。醒脳開竅法の開始は早ければ早いほど効きます。
牧田病院の取り組み
8月の日本中医学交流会学術大会で私とともに講師として招聘されていた植松先生が、醒脳開竅法(せいのうかいきょうほう)の治療例を報告されていたのを、ずいぶん懐かしい想いで聞きました。「懐かしがってばかりいても仕方がない。効く治療はきちんとみなさんに伝えなければ」という気持ちになり、このメルマガを書く次第となったわけです。東京で当時、植松先生と同じ勉強会に参加していました。 現在、植松先生は牧田総合病院付属牧田中医クリニックの中医鍼灸部長。鍼灸を治療に取り入れている総合病院はとても少なく、貴重な存在です。病院だから醒脳開竅法も活用できるというわけです。 牧田総合病院付属牧田中医クリニックのURLは以下です。
http://www.makita-hosp.or.jp/cyui/
脳開竅法(せいのうかいきょうほう)は脳血管障害、脳卒中後遺症の治療だけでなく、別の原因で動かなくなった肩や肘や手の指を動くようにする治療にも応用できます。 あきらないでお試しください。